内容説明
昭和27年、一代で三田に外科病院を築いた祖父時田利平はすでに亡く、一族の長老、政治家の風間振一郎も急死した。東大の医学生悠太はセツルメントに関わっており、後に“血のメーデー”と呼ばれるデモに参加して負傷する。妹央子はヴァイオリンの才能を認められパリに滞在している。占領が解かれ、混乱しつつ復興する東京を舞台に、外科病院一族の戦後を描く、待望の『雲の都』第一部。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
205
『永遠の都(全7巻)』がよかったので、その続編である『雲の都』を読んだ。一代で三田に外科病院を築いた祖父時田利平はすでに亡く、一族の長老、政治家の風間振一郎も急死した状態。『永遠の都』では子供だった悠太が主人公で、著者の自伝的要素が反映されている。東大の医学生悠太はセツルメントに関わり、妹央子はヴァイオリンの才能を認められパリに滞在。米軍の占領が解かれ、混乱しつつ復興する東京を舞台に、やがて迎え来る大学の政治の季節の雰囲気をうまく伝えている。2015/11/08
松本直哉
25
敗戦と前後して時田利平が死に、『永遠の都』の最初で幼稚園児だった悠太は大学で医学を学んでいる。時代は50年代、再軍備反対・米帝打倒・暴力革命などの語が強い訴求力を持ち、それは皇居前広場での血のメーデーで頂点に達する。セツルメント運動への献身を通じて最貧層の劣悪な環境に触れても、左翼運動には距離を置く主人公は、戦争直後手のひらを返すように国粋主義から民主主義に乗り換えた思想の無節操に深い懐疑を抱いている。無思想のいいとこのお嬢さんのように見えた桜子の意外な素顔、彼女と悠太の接近が印象的。一重瞼の細身の夏江も2024/09/26
それいゆ
20
以前、著者の「高山右近」を苦労して読了したことがあります。その時は、右近の講演会を主催することになり、資料を作成し来場者に説明する時間を与えられたこともあって、必死に読みましたが難儀しました。この「雲の都」は、それ以上に難解で途中でギブアップです。読み方が分からない漢字が多く、文章も深い闇の中に迷い込んだように芸術的です。興味深い壮大な物語なのですが、「伝える力」「聞く力」「別れる力」という言い方をするならば、私には「読む力」が明らかに不足です。「我慢する力」もないのかもしれません。情けないの一言です。2013/02/03
キムチ
8
「永遠の都」に続く小説と云う事で、時田一族の次の世代・・風間、脇田、小暮家の各人が種々に動いている。筆者の自叙伝的内容と云われているが、登場人物の多さと「延々と続く」感じの文章で読みとおすにはひたすら、体力がいる。 Ⅰは小暮悠太が主人公、医学生となった彼が東大紛争に巻き込まれ、血のメーデー事件を体感するまでの下り。長老、風間振一郎が急死し、妹央子はバイオリニストの才能がパリで開花始める。時代は戦後混沌から復興への時、東京を舞台に外科一族が織りなす人生模様・・いいも悪いも読んでいくしかない。2013/04/27
TAKAMURA
2
お気に入りの作者の4冊目の作品。登場人物が多いが、読み進めるうちにそれぞれが際立ってくるので 問題なし。 後半から一気に楽しめた。2017/03/09