感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
172
第78回(1977年)芥川賞。 旧来の風習が色濃く残る 村の日々を 描いた作品である。 「祭りの夜」が 特別な時間である 村の空間を 丹念に描く… 民族的な山村の小世界が、ガシンという 少年の花嫁とりの必死さとともに、 印象的な作品だった。2017/10/11
kaizen@名古屋de朝活読書会
122
芥川賞】山村民俗伝説。いつの時代なのだろう。山で暮らすには、自然と村の対立が一番大きく、その次に家族間なのだろうか。個人が埋もれていくのだろうか。榧(かや)が振り仮名がなかったら読めなかった。橡(とち)、椋(むく)は読めない。柿、杉、栗は読める。2014/07/21
ヴェネツィア
65
1977年下半期芥川賞受賞作。時代も特定されないし(おそらくは江戸中後期か)、場所も定かではない(古い伝承と因習の残る土地)、他とは決定的に隔絶した村での「榧の木祭り」の前後1日を鮮やかに描き出す。ひじょうに民俗色に濃く彩られた小説だ。物語を紡ぐ手腕は新人ながら老練でさえある。ただ、選考委員だった大江健三郎は、この伝承をそのままに語るのではなく、それを客体化することの必要性を指摘していた。大江の描く『燃えあがる緑の木』は、まさにそのような小説であり、それ故にこそ尖鋭に現代的な意味を問いかけていたのである。2013/08/26
大粒まろん
25
面白味(表現)としてはあると思わせる筆運び。散文形態。民話譚とでもいうような。村のシキタリを口頭伝承されていく村の若者ガシンのお話。村のお祭り「榧の木祭り」では村の子供以外が森に入って榧の実を集め、最もたくさん集めたものがカミ、最も少なかったものがゲスと呼ばれ、村での序列が決まる。ゲスは村を追われる間引きシステムにより村は維持されて行きます。弱者は去り強者はカミとなるこの物語は現代でも手を替え品を替えそこら中にあるような、なかなか怖い御伽話でした。欲を言うなら、おん婆の視点での語りなら、尚良かったのかも。2023/09/13
KIDCOLORポンパ
4
一気読み。夢中で読んだ。目が離せない。美しく悲しく切ない真正直な15歳の少年の話。 今年いちばん心に響いた作品かも。以下若干ネタバレあり。 土俗的な濃すぎる風習の中で育った少年の短い物語。真正直で純粋な少年は、「花嫁」の末に………。20代50代で読後感が違うのは、親世代、あるいは祖父母世代になった自分の視点が変わったからなのだろう。 自分の息子や孫を重ねてみたら、あまりにも悲しすぎる。 手首の痛む描写が、逃れようのない現実であることを証明するように何度も描かれると、余計切ない。2024/10/16




