出版社内容情報
【紀伊國屋書店チャンネル】
ギャラ飲み志願の女性、作家ワナビー、大切な手紙を失くした高校生……こんなにも世界が変ってしまう前に、彼らが夢見ていたものは。
内容説明
ギャラ飲み志願の女性、深夜の学校へ忍び込む高校生、寝たきりのベッドで人生を振り返る老女、親友をひそかに裏切りつづけた作家…かれらの前で世界は冷たく変貌しはじめる。これがただの悪夢ならば、目をさませば済むことなのに。感染症が爆発的流行を起こす直前、東京で6人の男女が体験する、甘美きわまる地獄めぐり。
著者等紹介
川上未映子[カワカミミエコ]
大阪府生まれ。「乳と卵」で芥川賞、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、『夏物語』で毎日出版文化賞など受賞歴多数。『夏物語』は英、米、独、伊などでベストセラーとなり、世界40ヵ国以上で刊行が予定されている。世界でもっとも新作が待たれている作家のひとり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
420
タイトルの「春のこわいもの」は、直接にそれを示唆する言葉や場面はないが、どうやらコロナ禍のことだと思われる。2022年2月刊の書き下ろしだが、すべてコロナ下の物語である。6つの短篇を収録。「淋しくなったら電話をかけて」以外は、一人称語りである。そして、「ブルーインク」以外は女性の物語。年齢は高校生から老人まで様々。共通するのは、意思疎通の困難さと、それゆえに抱える主人公の(相手もだが)孤独だろうか。それは、コロナによって周辺の状況が研ぎ澄まされてしまったことによって、露わになったのだと思われる。2025/05/19
starbro
365
川上 未映子は、ご主人阿部 和重共々、新作中心に読んでいる作家です。久しぶりの新作は、コロナ禍の重苦しさが反映されているような短編集でした。オススメは『あなたの鼻がもう少し高ければ』&『ブルー・インク』です。 https://www.shinchosha.co.jp/book/325626/2022/03/20
青乃108号
312
遂に読み尽くしてしまった。川上未映子の小説。思えば「黄色い家」で始まった俺の、川上への偏愛。最後となる小説はコロナ禍に生きる人々を題材にした短編集。って言えば誰でも思うのは「ツミデミック」だろうが、アレより一年以上前に出版されている本作は6編の短編がそれぞれ独自のカラーを持ち、それぞれが強力な引力でもって読む者を物語世界に取り込んでしまう。読み終えて、解放されて現実世界(コロナ後)に戻れた時の安堵感ったら半端ない。しかし考えて見れば出版時はコロナ禍の最中だった訳で、リアルタイムで読んだ人は読後もコロナ禍。2025/02/01
うっちー
214
芥川賞作家の川上氏の難しい世界観。題名の『春のこわいもの』の雰囲気がなんとなくわかったかな2022/05/15
貴
199
周囲の人から理解されていない、周囲の人たちとは心が通じ合っていない、それでも生きて行かなければならない。『春のこわいもの』2023/01/17