出版社内容情報
80代半ば、老人でいることにも飽きてきた。「最後の勉強」でもしてみるか。「老化につれて狭くなった私の世界の外で、新しく魅力的な知的世界が着実に築かれつつあるらしい」――ではこれを生きるための読書、「最後の勉強」の対象にしてみたらどうだろう。伊藤亜紗、斎藤幸平、森田真生、小川さやか、千葉雅也、藤原辰史……若い世代の知性にふれ、学んでゆく喜びをいきいきと綴った読書エッセイ。
内容説明
伊藤亜紗、斎藤幸平、森田真生、小川さやか、千葉雅也、藤原辰史…86歳、新世代の知性を読む。
目次
もうじき死ぬ人(老人でいるのに飽きたよ;だったら「お祭り読書」でもやってみるか)
生きるための読書(もし目が見えなくなったら―伊藤亜紗;コモンと気候変動―斎藤幸平;数学芸人と幼い子の未来―森田真生;騙しながら助けあう―小川さやか;バカの壁の外へ―千葉雅也;「私」がいる文章の方へ―藤原辰史)
静かなアナキズム(テロリズムの時代;よみがえるアナキズム;隠れアナキスト・鶴見俊輔;生きるための読書)
付記 階段からの転落とその後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白玉あずき
31
86歳にしてこの知的好奇心と読書力。勇気と希望を分けていただき有難うございます。特にアナキズムvs.ボルシェビキの回想と考察が面白い。現在のアナキズムの復権を語るに、斎藤幸平氏と森田真生氏の対談を引用するとか予想外だったわ。鶴見俊輔さん始め、マルセル・モース、クロポトキン、グレーバーからブレイディみかこさんまで。紙面がキラキラしています。2025/04/22
阿部義彦
25
最近元筑摩書房専務取締役の松田哲夫さんの新刊を読みましたが、こちらは元晶文社の取締役の津野海太郎さんの本です。昔彼が作った季刊誌『本とコンピュータ』には世話になりました。この二人に加えて都築響一さんが私に影響を与えた編集者になります。都築さんはネットに仕事の場を移しました。前のお二人は各々76歳と86歳。お二人共に病気、怪我で満身創痍で本が出るのが遅れました。そんな津野さんが「もうじき死ぬ人」として綴った読書エッセイ。若い世代の人文書を読み思う事を綴ります。私が既読だったのは、小川さやか、森田真生の二人。2025/01/01
えりまき
15
2025(34)初めましての浦和在住の津野さん。シリーズ4弾目。「『八十歳!』とカトリック詩人の大物、ポール・クローデルは日記に記した。『目もだめ、耳もだめ、歯もダメ、足もだめ、呼吸もおぼつかない!しかし、とどのつまり、それらのもの無しでも満足に生きていけるというのは驚くべきことである!」「心身の老化につれて、じぶんの生きる世界がすさまじい速度でちぢんでいく。」。伊藤亜紗さんや小川さやかさんなど、敬遠していた若い人の本に挑戦された津野さん。柔軟な考え方やチャレンジ精神に元気いただきました。 2025/02/04
kuukazoo
13
お名前は方々でお見かけしてたが本を読んだのは初めて。84歳の自分を〈老人〉と〈死〉の間にある「もうじき死ぬ人」と位置づけ、人生最後の「お祭り読書」。名づけが良い。読まれたのは伊藤亜紗や斎藤幸平や森田真生や藤原辰史など、自分がもうすぐ去るこの世をこれから生きていかねばならない若い人たちが書いた本。1人の読者として素直に驚き、受け入れ、やわらかく読み解いていく文章がよかった。後半の鶴見俊輔を中心としたアナキズムについての考察も勉強になったし、階段から落ち術後せん妄状態になった話もなんかすごかった。よき本。2025/03/29
タイコウチ
12
2022年にスタジオジブリの雑誌『熱風』に「もうじき死ぬ人」というタイトルで連載されていた文章が元になっている。最近の人文社会系の書き手の本をまとめて読んだ記録ノート(津野さんは「お祭り読書」と呼ぶ)。取り上げられている中で読んだことがあるのは、伊藤亜紗、斎藤幸平、小川さやかくらいで(といってもそれぞれ1冊ずつ)、森田真生、千葉雅也は未読だったので、読んでみたいと思った。後半は鶴見俊輔の読み直しを通じてのアナキスト論で、ブレイディみかこへの言及も。評論ではないと謙遜しているが、とても刺激的なブックガイド。2025/02/28
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