内容説明
百年前に生まれた、日本一POPな男。外国に行ったこともないのにニューヨーカーみたいで、貧乏なのにお洒落、若者を夢中にさせた老人―。J.J氏の知られざる前半生を、名編集者が明かす。
目次
序 買物をするファンキー老人
図録 ぼくは散歩と雑学がすき
第1章 下町の商人の息子
第2章 前衛かぶれ
第3章 銀座のモダン青年
第4章 第二の青春
著者等紹介
津野海太郎[ツノカイタロウ]
1938年福岡生まれ。早稲田大学文学部卒業後、演劇・出版に携わる。編集者として、「植草甚一スクラップ・ブック」41冊をはじめ植草甚一の数多い著作、植草甚一責任編集の雑誌『ワンダーランド/宝島』を手がけた。晶文社取締役、『季刊・本とコンピュータ』総合編集長、和光大学教授・図書館長を歴任。評論家。主な著書に『滑稽な巨人―坪内逍遙の夢』(新田次郎文学賞)、『ジェローム・ロビンスが死んだ』(芸術選奨文部科学大臣賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
24
傍に居た人だからこそ語れた伝記。なによりも、文章が気持ちが良い。「ファンキーじいさん」植草甚一のヒヤヒヤしてしまうような言動を暖かく見守り、しょうがない人だなと私たちと共に呆れ、でも突き放さない。植草甚一を闇雲に聖人君子にしないその姿勢に、私は他でもない著者の知性と温厚さを見出してしまう。津野海太郎、なかなか侮れない書き手と見た。社会学や文学の視点から見ればこの伝記は薄いかもしれないが、研究書にはないそうした温もりが本書をブリリアントなものにしていると思う。エゴを押し出さない編集者の書物は気持ち良く読める2019/12/02
mstr_kk
12
津野海太郎の書いた、植草甚一の伝記。すばらしい面白さ。そして、読みやすいものの情報量はめちゃくちゃ多く、読み切れた気がしません。植草甚一の晩年は楽しそうで、憧れる気持ちはよくわかりました。見習いたい。2019/01/23
takeapple
11
東京への行き帰りの電車の中で一気読み。植草さんの苦悩がよく分かった。近くにいた編集者だから書けたのでしょう。津野さんって『本とコンピュタ』の編集長ということしか知らなかったけど、なるほどそういうことだったんだと納得。益々植草さんの本を集めたくなる。2025/06/23
Susumu Kobayashi
7
植草甚一の生涯を、編集者としてつきあいのあった著者が描いている。特に、敗戦までの時代に重点が置かれていて、およそ八割を占める。植草甚一に関心のある読者(ミステリ、ジャズ、映画関連)には興味深い。当然ではあるが、好きな生き方を通すためにはさまざまな苦労を強いられることになる。われわれも苦労とバランスをとりながら、より好ましいと思う人生を送るようにしなければならない。とりあえず、やりたいことはさっさとやった方がいいというのが、亡き父から得た教訓である。2018/01/05
weiss
6
植草初心者には不向きの書だが、植草甚一をを植草甚一たらしめる活動は、死ぬ前のわずか10年足らずだった(もちろんそこに至るまでは大変な蓄積があったのだが)、とか、植草ブームを支えた裏には前衛芸術活動の隆盛や、高度経済成長による物欲礼算のムードなどがあった、などなど細かい知識はたくさん拾えて個人的には大変面白かった。2009/11/19