内容説明
大地はすべてを記憶している。生きてきた場所に立てば大地の記憶の声が伝わってくる。半生を過した場所を辿る自伝的な連作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
5
25年ぶりの再読。瀬戸内寂聴とピーコの対談でこの本を読んで、ピーコが泣いたと言うので。やはり、核となるのは、年上の小田仁三郎、結婚を終わらせた若い男の凉太、そしてこの本に登場する同業者の「新しい情事の相手」になるのか。78歳の寂聴が振り返る、暮らしてきた場所、幼い頃からの日々、結婚生活、終戦、「流行作家」になるまでの道、暮らした男の息づかいが、静かに、走馬燈を眺めるかのように描かれている。40代で形になってくる出家遁世への憧れ。99歳で幕を閉じる人生の終焉まで、この本から20年か。出家は救いか。2023/04/22
michi
2
★★★★ 瀬戸内寂聴の作品といえば「源氏物語」しかないことに彼女の死後気付いた。高橋源一郎が彼女の最高傑作と紹介した一冊がこれ。これを皮切りに何冊か読んでみたいと思う。この作品はいわゆる私小説。彼女が暮らした土地を歩き、その土地の記憶がうわっと甦ってくる感じがすごいと思った。2021/12/18
sukimasalon06
1
荒川洋治先生が「瀬戸内寂聴の最高傑作」と推されていたので、読みかかる。50年の歳月を経て、場所に染み付いて蘇る記憶。少なくとも全徳島県民必読とか言う偏狭を軽く越えて行く。これは小説なのか、とも思うけど、立ち上がる情趣はジャンルを吹き飛ばす。2023/05/11
Ryoko
1
寂聴さんが70代後半に書いた自叙伝。昔住んだ場所を巡り、その時誰と住んでいたか何があったかが書かれている。今現在の著者からは想像もできないが(失礼)男女関係で色々あったんですね。リアルタイムではないからすごいなぁとしか思わないが今の時代だったらマスコミ、ネットでかなり叩かれていただろう。女性だし。当時から半世紀過ぎ、どんな出来事も良い思い出に昇華されているんだと思う。自伝ってつまらないものが多いけど、さすが寂聴さん、この本は面白かった。2020/11/23