内容説明
1000年の間、日本人は源氏を読んできたのだろうか?ただ、「記憶」の中で継承しただけではないのか。中世から近代まで、天皇家、貴族、将軍たち、戦国大名、女たち、庶民は、源氏をどのように享受し、利用したのか。
目次
はじめに 物語は誰のものか?
1 男と女の源氏物語
2 青海波舞の紡ぐ「夢」
3 分裂する天皇家の源氏戦略
4 戦国乱世の源氏物語
5 太平の世の源氏狂い
6 近代化の波の中で
著者等紹介
三田村雅子[ミタムラマサコ]
1948年、東京生まれ。早稲田大学卒業、早稲田大学大学院博士課程単位取得修了。フェリス女学院大学文学部教授、図書館長。日本文学協会委員長。専攻は「源氏物語」「枕草子」「うつぼ物語」、日記文学、中世物語。身体論、メディア論の角度から本文を読みこんできた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tyfk
6
「この本でわたしが書こうとしたのは、紫式部の思いなど置き去りにして、ひたすら装丁の豪華さを誇り、挿絵の鮮やかさを競い、源氏物語再演の催しを行う享受者たち、権力者たち——道長・彰子の後継者たちの側の物語である。」p.24 「天皇としての正統性に疑念が持たれた天皇や、新しく勃興する摂関家の一員、自己を権威化していきたい将軍は源氏物語に魅せられ、それをなぞり、それを再現する。『ヒカルゲンジ、それは私だ』と、すべての権力者が呟いた時、源氏物語の神話が蘇る。」p.1982024/02/10
maekoo
6
読み応えのある論文で定評のある三田村教授の源氏物語の膨大な享受史を深く掘り下げた508ページに及ぶ「新潮」に連載していたものに加筆修正した労作で名著です! 当然「更級日記」や「とはずがたり」は勿論、俊成の妻美福門院加賀の源氏供養の源氏物語に対する屈折した愛も取り上げられ、定家の青表紙本を始め、源氏物語を正典・規範とする文学や文化の世界における享受の歴史も描いています。 この著では「とはずがたり」の中での後深草院と女房二条の史実に元ずく物語と源氏物語の連関を詳しく書かれていて興味深いです。2021/07/17
かもめ通信
5
一番面白かったのは導入部。あとは最後の現代語訳の部分かな。肝心の中核部分は正直あまり興味が持てなかった。とりあえず、谷崎の源氏もチェックしてみよう。2014/04/14
かな
3
政治の話がとくに面白かったです。美は力なんだと思わせる。2018/05/31
そーだ
2
素晴らしい本だが、1ヶ所間違いがある。167頁、義仁親王は直仁親王の子ではなく、光厳天皇の子である。長年放置されてきた存在で、皇位継承に関わるようなことは決してなかった。後小松天皇の箏の師であり、そして琵琶・笙も嗜なむ音楽の名手として呼ばれたのだろう。親王宣下も義仁にとって名誉なことであったと思われる。なお、栄仁親王の子である貞成も、父が行幸に参加したことを「御思出とも申ぬべき」(『椿葉記』)と表現しているが、これは額面通りに受け取って良いのか疑問が残る。2011/05/08