内容説明
妻の遺体は誰のものか―究極の“愛の行為”を描く、戦慄の傑作短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
313
今時には珍しいフランス装かと思いきや、そうではなくて袋綴じ製本。紙質も厚い。そして文字も大きい。つまり、これ1作で1冊の本にしようとする苦肉の策。『秘事』と合わせて1冊にするのが普通だと思うのだが。小説の内容と質とを考えれば許せる範囲か。小説は、しめやかな前半から一気に急調子に転じる後半へと推移する。おそらくは読者の誰もが想像すらできない。「愛」なんだろうか、やはり。男性作家にはまず書けないだろう。その不可能性に想いをいたすからだ。河野多恵子さんは凄い。2017/10/26
YM
81
読友さんにまた素晴らしい作品を紹介してもらった。前情報ゼロで読んで正解、河野さんすごい!僕は本当に感動した。こんなこと考えたこともなかった。とにかく体温や感覚の伝わる表現がリアルすぎる。あと全然センチメンタルじゃないとこがいい。むしろサディスティック。きっといつもこんな感じだったんだ。なんにも悪いことしてないし、奥さんだし、今しかないんだから。久保氏の<来ることならん!>がめちゃかっこいい!しびれたー!引かれたっていいじゃない。愛だよ愛!2015/01/15
じいじ
47
70歳を境にして、私は自身の「死」について考えることが多くなった。「決して俺より先に死んではならぬ・・・」と3歳下の妻に折に触れて懇願している。妻に先立たれて、腑抜けになった先達を何人も見てきた。惨めな自分自身の姿が重なってしまう。(弱さは終生の酸素生活にその因があるが、まったくダラシナイ限りである。)本作は、夫55歳にして5歳違いの妻に先立たれた男の妻への愛と悲哀を、河野多惠子は丁寧に描いている。文中「妻の遺体は誰のものか・・」と真剣に悩む夫が痛ましい。「女は強し」は、平均寿命がそれを証明しています。2015/01/20
Take@磨穿鉄靴
41
私には著者が何を伝えたいのか何を表現したいのか分からなかった。読み終えてから分からなくてもよいと思った。あまり理解したいとも思わない。多分もう表紙を開いた時点で久保氏は壊れていたのかと思う。そう考えた後「では私は壊れてはいないのか?」と自問したら「久保氏と壊れ方は違うけれども私も私で壊れている。人は皆どこかしら壊れている。」そう思い至った。みんな壊れている。★★☆☆☆2024/04/13
★YUKA★
37
全ページが袋とじで、珍しい本だなぁと読んでいたのですが、こんな内容だったのか!なかなか衝撃的でした。主人公の淋しさ、独占欲、色々な物を感じとれ、最後にはタイトルの意味がなんとなくわかった気がしました。2015/06/04