出版社内容情報
蒸気機関車運転手、捕鯨船員、鉱夫、シベリア抑留体験者、やくざ、七三一部隊……。
昭和の影を色濃く映しながら、行き場を失った人たちが自分らしく過ごすドヤ街の終の棲家〈きぼうのいえ〉。そこでの「他人が他人を看取る」世界に寄り添いながら、死生観のありようを静かに照らし出していく――。講談社ノンフィクション賞受賞作『段ボールハウスで見る夢』から十年。丹念に書き上げた端正なドキュメント。
内容説明
昭和の影を色濃く映した、行き場を失った人たちが自分らしく過ごすドヤ街の終の棲家“きぼうのいえ”。「他人が他人を看取る」世界に寄り添いながら、死生観のありようを静かに照らし出す端正なノンフィクション。
目次
隅田川花火と散って
ドヤ街のマザー・テレサ
お茶会の花形役者
浮き草に根をくれし館天の川
シベリアの手品
フルコースをどうぞ
生きる糧、そして散骨
ある愛の終着駅
拳銃密輸五百丁?
輝き
天国へのハープ
粋な別れ
著者等紹介
中村智志[ナカムラサトシ]
1964年、東京都生まれ。上智大学文学部卒業後、朝日新聞社入社。「アサヒグラフ」「週刊朝日」「アサヒパソコン」編集部、東京本社社会部などを経て、現在「週刊朝日」編集部員。1993年12月からの長期取材をもとに、1998年、『段ボールハウスで見る夢』(草思社。後に『路上の夢』と改題され講談社文庫)を著し、同年度の講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nonpono
46
中村さんの「段ボールハウスで見る夢」が好みで本作へ。山谷のきぼうのいえが舞台。「入居者の来歴はさまざまであるが、今現在、行き場がないという点は共通している。」人々のいえ。一本、一本、そこには濃密な人生の軌跡がある。前作にも感じたが、嘘にまみれようが虚勢を張ろうが呆けていようが、語る人生にはどこか真実の欠片が混じっている。途中からタオルを片手に涙を拭いながら読んでいた。酸いも甘いも飲み干して駆け落ちしたパートナーが生涯に一度だけ、いつも「あんた」と呼ぶのに、初めて「お父さん」と呼んだ刹那、涙腺が決壊した。2025/01/26
ほうき星
14
以前、このホスピスについての本を読んだことを、読み出してから気づいた(汗)筆者が取材をしていたものをまとめたもの。山谷という地域にホスピス…まずそこから興味を抱きました。今もドヤ街はあるが高齢化している。山谷は歴史のある地域、街も人もちょっと独特ではあるけれど、このきぼうのいえで最期を迎え入れる人は、尊厳のある最期を過ごせるのかもしれない。人は生まれてくる時も死ぬ時も一人。それを強く感じた。時を刻む音が聞こえてきそう…。2014/05/03
いちご
6
人生いろいろ、望む最期のあり方もいろいろ。家族に見守られてその時を迎えることができない人、望まない人、いろんなあり方があっていいし【普通】とされている最期を選択しないことを受け入れたその家族を責めない社会になってほしいと思いました。正直身近にいれば厄介だなと思いタイプの人もいましたが、本人が幸せな最期を迎えられるのはいいことです。登場人物の生い立ちを読んで、戦後の日本には皆が知らないだけで、とてつもない格差があることも知りました。2025/03/02
よしじ乃輔
6
山谷のホスピス「きぼうのいえ」に集まる行き場の無い人々とスタッフを描く。家族身内の無い人達の最後の看取り。様々な生涯を紹介するが、「高齢者の孤独死」に密接に関係している事に気がつく。心ある看取りに羨ましさを感じ、今後、このような形態の施設が更に必要になるのだろうと思う。余談だが、様々な過去の中には歴史的事件との関わりをはなされる方もおられ驚く内容も。2022/06/20
cocari
5
私の進みたい道の決心をさせてくれた本です。そして、そんなコトも忘れかけてた時に、また私の居場所を教えてくれた大切な本です。