内容説明
平和な時代の市民生活の哀歓、第二次世界大戦の昂揚と荒廃と虚脱…。近代日本の歴史とともに生きた楡脳病院一族三代の悲喜劇を描き、近代日本の市民生活の転変と心の遍歴をうつす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
65
T.マン『ブッデンブローグ家の人々』に触発されて、著者自身の一族を下敷きと云う本書。三島由紀夫や辻邦生は高く評価したと云う。明治末から昭和の太平洋戦争直後まで、脳病院の初代院長楡基一郎の生涯を端緒に、時代の流れに翻弄されながら波乱に満ちた世相を逞しく生きた、一族三世代の人間模様が、著者独特のユーモアを交えて、描き出されている。個性豊かな登場人物に魅了された。基一郎のカリスマ性、その長女龍子の気位の高さ、その夫、学究肌で経営に疎い2代目院長徹吉、桃子、欧州、米国、蔵王山他。読み易かった故読了出来た。2017/04/09
ふみ
17
大正から敗戦後までの楡家の隆盛と没落。みんなちょいと困った人々である。そして仲が悪い。戦中にかけて暗い描写が続くが総じてユーモラスでリズミカル。ラストの龍子の頑なさがラスボス感があってよい。 背表紙だけを眺めて読もうとしなかったのが惜しまれる。名作。2022/01/10
うぃっくす
5
下知識なく読んだら意外と重い話だった。青山の精神病院の楡家三代の記録。時系列の三部構成で楡基一郎が死ぬまでの楡病院一番輝いてたときの第一部、第二部で世代交代、青山から松原にうつって第三部は第二次世界大戦。読後感は楡家うんぬんより楡家とともに戦争前後の東京を生きたような不思議な感じ。結局龍さまタフだった…。なんかとにかく印象に残る読み応えのある話だったわ。さすが北杜夫。2020/12/20
mawaji
2
北杜夫追悼読書。最近は何冊か並行して本を読む傾向があったのですが、今回は他の本が入り込む余地がなくこの一冊に集中して一週間で読了。楡家繁栄の第一部、基一郎没後楡家の歯車が狂い始めた第二部、戦中戦後の混沌の第三部と、作者自身の人生や医家斎藤一族の人々と照らし合わせ、興味深くかつ面白く読みました。やはり少し物哀しい読後感ですが、それでもどーんと落ち込まずに済んでいるのは、楡家の逞しい女性たちの前向きさに救われているからでしょうか。自身の戦争体験に基づいていると思われる医師としての死生観にも心を打たれました。2011/11/03
Rosa
1
斎藤茂吉の息子、北杜夫さん一家の物語。 東京では有名だった松沢病院(楡病院)が、この物語の舞台。 第二次世界大戦によって、其々の運命は巻き込まれ、時代に翻弄されながらも、直向きに逞しく生きる楡家を巡る人々の姿が、コミカルに描かれます。 2018/02/01
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- 和書
- きがきじゃない