出版社内容情報
世界有数の快楽地、新宿二丁目――そこは、地球の中軸が通っている場所だった。アダムとイブ以来の繁殖形態に挑む白石一文版黙示録。
内容説明
小説家の前沢倫文が恋人の英理と暮らす新宿区の総戸数千三百戸のタワーマンション、ファウンテンブルータワー新宿で、米露中の要人が立て続けに不可解な死を遂げた。しかも現場には、白い幽霊の目撃情報が…。死の謎を追うため、マンション内を偵察する倫文は、マンションに秘められた驚愕の事実に辿り着く。六千五百五十万年前の再現を狙った壮大な企みの正体とは?
著者等紹介
白石一文[シライシカズフミ]
1958(昭和33)年福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000(平成12)年『一瞬の光』でデビュー。2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌2010年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
205
白石 一文は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。ファウンテンブルーって何かと思っていたら、近未来SF国際謀略妄想小説巨編でした。最初は快調に飛ばしましたが、風呂敷広げ過ぎ、最後は失速しました。果たして人類から性欲が消滅したら、人類は幸せに平和になるのでしょうか?タワマンの高層階に居住し、若い中性の美人と同棲するのが著者の理想かも知れません(笑) 最近メディアで「オナマン」という言葉が良く出てきますが、発音も意味もエロいと思います。【読メエロ部】2021/06/07
どんぐり
86
AIロボットが物語の世界では流行っている。マキューアン、イシグロ、そして今回の白石と続く。初出が『週刊新潮』の連載。どうもへんてこな物語を創造したようだ。よく連載打ち切りにならなかったものだ。ひと言でいうと、荒唐無稽。あまりにリアリティがない。主人公は、隕石が落ちた新宿2丁目の跡地に建つタワーマンションに住む作家。大学生の英理との夜の営みにAIロボットのマサシゲ。アメリカ・ロシア・中国のミサイル技術者の連続死事件に白い幽霊の噂。→2021/08/25
pohcho
64
「新宿二丁目の秘密。体外離脱。AIロボット。白い幽霊。不可解な連続死。隕石衝突。地球の根本原理。T、T、T、T、T、すべてはTのせい」という宣伝文句が可笑しい。いつもの白石さんにSF、オカルト、ミステリー、国際的陰謀、ジェンダーなどいろんな要素をぶちこんだ感じ。ぶっとびすぎていて時々可笑しかった(AIロボットのマー君の言葉遣いが、時々楠正成になるところがツボ)人工子宮はいいけど、性欲のない世界ってどうなんだろう。白い幽霊は結局なんだったのか?話とは関係ないけど、主人公の作るごはんがすごく美味しそうだった。2021/07/01
nanako
47
読み終えました…。白石一文は大好きな作家なので、必ず読みますが、数年前から作風が変わっています。この作品に初期の作品の「感じ」はありません。ただ、所々、作者が昔から考えていたであろうことが、この作品を読むことによって判る気がします。これは例えるならば、村上春樹の「1Q84」や「騎士団長殺し」的な荒唐無稽な話…。村田沙耶香的なところも、窪美澄のある作品的な感じもあります。でも、最後はやはり「白石一文」でした。そこは変わらないんだなぁ…、と少し安心。2021/09/05
Yunemo
36
本作品を読み終えて、まずはうーんとの唸り声をあげ。支離滅裂な冒頭から中盤になんとなくのイメージが湧き、後半でまたまた不可解さばかりが。これが白石文学の真髄と問われればそうなのでしょうが、全く不可解なり。現実なのは米露中要人の不審死のみ。ここから場面が展開しますが、結局は人間の繁殖とは、へ通じていきます。この不可思議な過程について行けなくて。でもこれってまだ未完と考えていいですよね。解明されない事象が多過ぎて。これが作者の意図するところなの。人類から性欲が無くなったら平和の道へ、そんなあり得ないとの想いも。2021/09/29