出版社内容情報
一ノ屋の血を引く信介の活躍で、島は戦後の復興を果たした。穏やかな営みが続くかに思えたが……。渾身の大河小説、感動の大団円へ!
内容説明
第14部 明日への航路―戦争孤児の勝利。戦地で大怪我を負った信介。島の復興に奮闘する信介に連れられ、勝利は初めて東京の土を踏む。第15部 野球小僧の詩―長嶋に憧れる静雄が入った中学の野球部は、崩壊の危機にあった。急ごしらえのチームで、静雄は都大会に挑むが。第16部 一ノ屋の終わり―一ノ屋の跡取り、松人は、一族の血を残せとの厳命を帯びていた。仲のいい理香は、歌手を目指して島を後にする。「邯鄲の島遙かなり 下」には、第14部から第17部まで収録。
著者等紹介
貫井徳郎[ヌクイトクロウ]
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒。93年、鮎川哲也賞最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年、『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
275
上・中・下、全三巻、1,700頁強、完読しました。明治~大正~昭和~平成~令和、150年に渡る大河小説、色んな物語の要素が組み込まれていて、長大作ながら最後まで引き込まれ、堪能しました。最期にサプライズがあれば、もっと好かったと思いますが、今年の読書における大きな収穫、著者の新たな代表作間違いなしです。この小説を書き切った後の著者は、今後どのような作品を産み出すのでしょうか? https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000317.000047877.html2021/11/11
ウッディ
125
戦争で傷ついた島の復興に尽力する復員兵の信介、野球に青春を捧げた静雄、一ノ屋の跡取りとして生まれながらも、男性が好きという自分の性向を持て余す松人、東日本大震災の ボランティアで人生の伴侶を見つけた育子、昭和・平成から令和へと受け継がれたイチマツの子孫と島の歴史は、大河ドラマのような満足感があった。女性活躍、LGBT、震災復興など、現代社会のにもつながるテーマを交えて描かれた島の歩みは、日本が歩んできた道をもう一度振り返る良い機会だったような気がする。ノルタルジックな読後感もあり、面白かったです。2022/02/28
のぶ
121
下巻では戦後の焼け跡の時代から、令和の始まりまでの期間が描かれている。四篇の話が入っているが、二編目の「野球小僧の詩」がやや冗長の感があったが、他はどれも面白く、楽しく読む事ができた。時代の変化もあるだろうが、物語が島から離れる部分もあり、できれば島内だけの話で通してもらいたかった気もした。全三巻を読み通し、神生島という東京沖の小島を舞台に17のエピソードで明治維新から現代までのクロニクルを展開した、過去に読んだ事の内容な大作を描き切った貫井さんには敬意を表したい。とても充実した読書時間でした。2021/11/03
ゆみねこ
104
イチマツの帰島から始まった壮大な物語も最終章へ。戦後の島の復興、野球に熱中する少年たち、一ノ屋の終焉と新しい時代。最終章は島の火山噴火と全島民避難から大きな災害を経てイチマツの末裔の未来を暗示させる大団円。読み応えのある長編、大満足で読了しました。2021/11/17
オーウェン
77
遂に最終となる下巻。戦後から令和までをイチマツの家系が巡っていく。軍船のビジネスに手を出したがゆえに、半ば崩壊状態のようなイチマツの家系。 戦後からの復興を目指すため、本土からの救援を頼んだり。 また野球がブームになり長嶋に憧れを持つ少年が甲子園を目指して奮闘する。 そして一ノ屋の家系にもついに終焉の時が迫る。 その理由が現代的であり、この時代には受け入れ難いものであったことは想像がつく。 広がった話の終息は令和になり、戻ってくるという帰結によって完結する3部作。 6年かけた大河ドラマ堪能しました。2021/12/30