出版社内容情報
校舎はラビリンス。そこでは日常はたえず奇妙にゆらいでいる。現実に微妙なズレを感じつつ生きる少年少女たちを描く表題作ほか三篇。
校舎というラビリンスでは日常はたえず奇妙にゆらぎつづけている! なかに入るとタイムスリップするという給食運搬用のリフト。毎日屋上からフェンスを越えて飛び降りるとささやかれる安行という謎の男。こことは並行して存在する異世界に思いをめぐらす少女。一見平凡そのものにみえる学校のかげに生じるかすかな綻び……。現実に微妙なズレを感じつつ生きる少年少女達を描く表題作他三篇。
内容説明
なかに入るとタイムスリップするという給食運搬用のリフト。毎日屋上からフェンスを越えて飛び降りるとささやかれる安行という謎の男。こことは並行して存在する異世界に思いをめぐらす少女。一見平凡そのものにみえる学校のかげに生じるかすかな綻び…。現実に微妙なズレを感じつつ生きる少年少女たちを描く表題作他三篇。
著者等紹介
日和聡子[ヒワサトコ]
1974年、島根県生まれ。立教大学日本文学科卒。2002年、『びるま』で中原中也賞受賞。以後、詩作に加えて、小説を発表するようになる。2012年、『螺法四千年記』で野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
39
★☆☆☆☆ 一見平凡そのものに見える学校という場所だが、そこはまた絶えず奇妙に揺らぎ続けているラビリンスでもある――。表題作他三編が収められているが、はっきり言ってどれもよくわからないの一言に尽きる。表題作について言っても、断片的なストーリーが合わさったかのような内容で、読み終わってみて結局何が描かれようとしていたのかがよくわからない。この不思議な世界観が好きだという人もきっといるだろうし、好き嫌いが分かれる作風であるのは間違いないだろう。個人的にはこの世界観はちょっと合わなかった。2016/08/24
小夜風
30
【図書館】心の中であれこれ妄想していることを思い浮かぶままに次々と書き連ねていったような文章でした。自分自身、ボ~っとしながら気がついたら○○について真剣に考えていたりすることがあり、何でこのことを考えていたんだっけ?と、記憶を手繰り寄せると、さっきテレビで見た△△がきっかけだったりして、自分でクスッと笑ってしまうことがあるので、そんな気持ちで読みました。支離滅裂で読んでも何も得ない……そんな読書時間でしたが、嫌いじゃないです。でも、もう少し判り易い方が好きかな(笑)。2015/11/20
八百
25
詩人というとやたらレトリックを駆使したり奇をてらった言葉の術で煙に巻いたりが昨今の流行り?なのであるが日和さんの小説はそれが少なく直球勝負。だからこそその飾りのない剥き出しの言葉の破壊力は凄まじく例えばスーパーのチラシや給食の献立表の羅列からでも易々とドラマを産み出してしまうのだ。そしてその感性が学校という日常を切り取るとき校舎に生命を与え子供たちの他愛ないことばや行動が赤い血となって流れ出す。当然動の対には静があり青く流れる血がこの作品の主題となるのだが…踏み込んで心の臓は何かを探すのも一興かも知れない2016/05/04
marumo
21
「ヒグチ×日和」本が待ち遠しくてフライング。中短編よっつ。「湖畔情景」夜叉ケ池チックで超好み。うかつ者人魚が龍をヒッチハイクするくだりはふざけてるのか、真面目なのか可笑しくってニヤニヤが止まらない。ストイックな河童は魂を病んでいるのか、人魚は本当はひとりぼっちなんじゃないのかと、月夜の湖畔の小径でラストはしんみり。「若水」冥界と現世の境、冷たく色のない世界でこちらも好き。鶴父さん、猫母さんも何故かすんなり受け入れてしまえるのでした。影法師のような中学生がフワフワと漂う表題と「兎」は置いてかれ坊主。2015/11/19
まさ
16
日和さん3冊目。これまで読んだ2冊とは違ったテイストなのだけど、日和さんならではの不思議さは同じ。本作4編もそれぞれで味わい深い。表題作の淡々と語られる日常がなかでも好みかな。生徒たちの日々が学校を作っている。まさに『校舎の静脈』でした。2019/07/13