出版社内容情報
戦前の米国で留学生が味わった悲劇を描く「善人たち」、名作を深く語り直す「戯曲 わたしが・棄てた・女」他、話題の新発見戯曲集!
内容説明
開戦直前、アメリカへの留学生が味わった“善意”を描き切る「善人たち」、信仰と薄汚れた政治的処世に引き裂かれる「切支丹大名・小西行長」、あの感動的な遠藤版聖女伝をより深く語り直した「戯曲わたしが・棄てた・女」。遠藤周作が“現在”を予言した未発表傑作3篇!
著者等紹介
遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923‐96年。東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、十二歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、55年「白い人」で芥川賞を受賞、以後『海と毒薬』で毎日出版文化賞、『沈黙』で谷崎賞、『キリストの誕生』で読売文学賞、『侍』で野間文芸賞、『深い河』で毎日芸術賞など受賞作多数。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多い。海外でも広く読まれており、『沈黙』はマーティン・スコセッシ監督によって映画化された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
102
戯曲集。未発表作3篇を収録。どの話もキリスト教の信条が背景にある。その中で「善きこと」とはいったい何かというのを著者が切々と問い掛けているように感じられ、読みながら心を揺さぶられた。表題作ではトムという牧師補と阿曽という神学校の留学生の関係が描かれる。二人は同じ宗教を信じる間柄だが、トムは自分が信じる善意を阿曽に押し付ける形となり、彼らの間に心の隔たりが生じてしまう。それは太平洋戦争で二人が対峙した時にも埋まることはなかった。自分もどこか表面的な善きことに囚われていたりしていないだろうかと思ってしまった。2022/04/22
ケンイチミズバ
98
自殺を固く禁じる教義を理由に武士としては恥をさらし、自決しない行長は秀吉に面従腹背で生き延びた。右近のように潔く大名を棄て宗教を選んだ生き方を羨ましく思ったが、彼には彼のクリスチャンとしての生きざまが最後の最後にわかります。卑怯者と罵られてもその十字架を背負い地にはいつくばって生き延びる姿こそキリストの民、神の子であり、首枷に裸馬でのさらし者の後、斬首はイエスと同じではないか。そして侍女のあかねは真の理解者ではあるが、神に背き背徳の愛を抱いた彼女もまた罪びと、悲しき人間でした。それにしても秀吉、クズ。2022/05/11
kaoru
83
再掲です。遠藤周作の未発表戯曲3作。『善人たち』は日米開戦前夜にアメリカ・オールバニ―に留学した日本人を通じ当地のキリスト教徒の偽善を暴き『鉄の首枷』は切支丹大名小西行長の生涯を描く。『私が・棄てた・女』は同名の小説の戯曲化。『鉄の首枷』では潔く信仰に殉じた高山右近や細川ガラシャに比べ「俗世の渦」に生きた行長はガラシャに「よごれ、よろめき、ひざまづき……なお生きつづけて闘うこと」を勧める。3作に共通して言及されるのはイエスの捕縛の際に彼の弟子であることを三度否認したペテロ。生涯を通じてキリスト教に→2022/06/08
とろ子
9
遠藤周作没後25年にあたる2021年12月28日、長崎市が長崎市遠藤周作文学館で未発表の戯曲3本が発見されたことを発表。題は編集部がつけたものとのこと。 「善人」ということは3作品に共通しているテーマだと感じた。「善人」とは?「許す人」?2022/06/06
peace land
8
表紙が舟越保武氏の「聖クララ」そのことに感激。 戯曲は普段読まないのに、この3作はとても興味深く読めた。善人たちが一番強烈だった。今も同じことが起こっているから。2022/09/24
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