内容説明
妻に去られたナッシュに、突然20万ドルの遺産が転がり込んだ。すべてを捨てて目的のない旅に出た彼は、まる一年赤いサーブを駆ってアメリカ全土を回り、“十三ヵ月目に入って三日目”に謎の若者ポッツィと出会った。“望みのないものにしか興味の持てない”ナッシュと、博打の天才の若者が辿る数奇な運命。現代アメリカ文学の旗手が送る、理不尽な衝撃と虚脱感に満ちた物語。
著者等紹介
オースター,ポール[オースター,ポール][Auster,Paul]
1947年生れ。コロンビア大学卒業後、数年間各国を放浪する。’70年代は主として詩や評論や翻訳に創作意欲を注いできたが、’85年から’86年にかけて、『シティ・オブ・グラス』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』の、いわゆる「ニューヨーク三部作」を発表し、一躍現代アメリカ文学の旗手として脚光を浴びた
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生れ。東京大学文学部助教授。『生半可な学者』で講談社エッセイ賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
194
『ムーン・パレス』の後に書かれた作品。前半はボストンをスタート地点に中西部からカリフォルニア、また南部へとひたすらに車で駆け抜ける物語。一転して後半は、ペンシルヴァニアの田舎に定点を据え、そこで物語が展開する。前半もバークレイで昔馴染みの女性との数日間の接触はあるものの、それにしても人間関係は希薄だ。それ以外は一人で車を駆るのだから。後半にしても、基本的には主人公のナッシュの孤立と孤独は深い。現在のアメリカ人が抱える孤独を彼が体現しているのだろうか。小説のエンディングには呆然とするばかりだ。2013/06/16
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
92
オースターがこの小説で書きたかったものは何だろう。 アメリカ全土をドライブし、延々と1万個の石を積み上げるというお話。 「動」の愉しみと「静」の苦しさなのか。 逆に、「静」の愉しみと「動」の苦しさなのか。 どちらともそうで、どちらともそうでないのだろう。 正解はオースターにさえ解らないだろう。 「衝撃のラストシーン」のその続きがどうなったのか、永遠にわからないように。 ☆5.02021/02/06
NAO
84
ポール・オースターは、都会でその存在が希薄になってしまった「幽霊」のような人々を何度も描いている。この作品にも、「幽霊」という言葉が何度も出てくる。他に「荒野」「石だらけの土地」もよく出てくる。その不毛なイメージは、「幽霊」とも重なるものだろうか。この作品では、ナッシュとポッツィが延々と石を積み上げ壁を作らされている。ナッシュにとって、石積みは、金を手にしたために幽霊のような存在になってしまったことへの罰なのだろうか。それでいて、積み上げた壁は、彼を幽閉してしまうものでもあるのだが・・・。 2020/05/15
コットン
70
50頁まで読んだところで、こちらの役者(突然金持ちにいなったが派手に使って残金が気になる主人公のナッシュが見ず知らずの服が破け、打ち傷だらけのポッツィを自分が何をしているのかも自覚しないまま自分の車に乗せる辺り迄。)はそろった。100頁目ではポーカーのカモになるだろう相手のフラワーとストーンに合うべく二人が豪邸の門番と交渉。ここまでで全体の1/3弱だが、ここからの展開が心理戦を観るようで面白い。読後感は強固なつながりと精神的な弱さが人間なんだなぁと実感出来る。2024/08/24
キムチ
65
相続財産をぶっからげ ロングドライブに出た元消防士ナッシュ。若い相棒、ボッツィと繰り出すギャンブル人生。彼らに絡むフラワー、ストーン、マークス。米の現代社会の典型的アイコンが繰り広げる狂騒の幕はリアルと言えなくもないがやはり不条理が前面に。いつものオースター作よりは読み易い。音楽が姿を現すシーンは3か所。特に死すら考えた相棒との別れ時のモーツァルトとヴィヴァルディ。そして空白の光の中へ突入していく場のモーツァルトとハイドン。表題の音楽が意図するものは?レクイエムという事から死・・偶然‥人生と帰結していく?2024/10/15
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