出版社内容情報
〈教団(オルデン)〉創立家に生まれつきながら一族の残虐さに反発し不審死を遂げた母ロサリオ、霊媒行為が心臓疾患を悪化させ死を迎えた父フアン。両親を失ったガスパルは、父が隠してきた闇の向こう側の存在を知り、避け続けてきた〈教団〉と相まみえることを決意する――。独裁政権時代から九〇年代までのアルゼンチン史をも呑み込み、ジャンルを超えてラテンアメリカ文学界を席巻した闇の一大叙事詩!
【目次】
内容説明
〈教団〉創立家に生まれながら一族の残虐さに反発し、不審死を遂げた母ロサリオ、霊媒行為が心臓疾患を悪化させ死を迎えた父フアン。両親を失ったガスパルは、父が隠してきた〈闇〉の向こうの存在を知り、避け続けてきた〈教団〉と相まみえることを決意する―。独裁政権時代から九〇年代までのアルゼンチン史をも呑み込み、ジャンルを超えてラテンアメリカ文学界を席巻した闇の一大叙事詩!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
38
ダーク・ファンタジーと言うにはあまりにも重く、禍々しい。単なるホラー映画かと思って観たロバート・エガースの『ウィッチ』を思い出した。生物の根源に拘わる原始的な恐怖と、克服するために人々が生み出した宗教は、それ自体が実際のものとして身近にあることから、この作品で描かれている邪教にも妙な説得力がある。南米の混沌とした歴史が土台にあることも物語に重厚感を与えていた。但し小説として見るならば、下巻の前半までは文句なしに面白かったものの、後半には中弛みが出来て終盤もやや拍子抜けの印象。全体の緻密さには唸らされた。2025/10/02
Shun
27
父から子へ受け継がれる超自然的な力。闇の力を巡り長年霊媒として利用されてきた男は、我が子を教団から遠ざけ一族に見つからないよう特殊な秘儀を用いる選択を決断する。余命僅かの男は切羽詰まった末の行為か、それとも暗い一族の秘密に近寄らせない為の愛ある行動か、その後の父と子の関係を大きく変えてしまった。後半では視点が子に移り、少年時代の不可解なある事件とその後の教団と再び対立する場面が描かれる。”闇”の力が関係する怖ろしい儀式と世界の裏で暗躍する組織と我が父の関係を知った子の物語、そして不器用な父の愛が胸を刺す。2025/11/02
本の蟲
20
いまどき「黒魔術」と聞くと、学生の悪ふざけや悪趣味なサークルを想像して失笑してしまう。しかし富と権力を握る有力者が「本物」に出会ったときの影響力。その執念に戦慄する物語。〈教団〉を創立した一族の歴史。霊媒の発見と〈闇〉との最初の接触。親の信仰を馬鹿にしていた幹部子女も、儀式を目の当たりにするとオカルトや神秘主義に傾倒し、同時に文化人類学や医学で業績を上げるようになる。父の計画で〈教団〉のことを知らずに育った、霊媒の少年ガスパル。遂に彼が真実を知った時…。キングの影響も色濃い南米魔術譚。2025/10/28
おだまん
8
案外ホラーっぽくなく「血族」の繋がりと愛憎がクローズアップ。いや、アルゼンチンの史実が絡んでいることがホラーなんだろうか?そう考えると怖いかも。2025/10/31
maimai
5
読了までにだいぶ時間がかかった。面白くないわけではない。むしろ異様な面白さに満ちているところもある。いわゆる「モダンホラー」では、面白いと思うものはあっても、怖いと感じたものは、これまでほぼ皆無だったが、これは怖い。禍々しい。もっともこれが「モダンホラー」なのかは微妙なところ。作者のインタビュー記事を引用する形で、訳者があとがきで触れているところによれば、スペイン語圏にホラーの伝統はないし、これと同じようなことは『ラテンアメリカ怪談集』(河出文庫)で、編者の鼓直がほのめかしていた。↓2025/11/13




