内容説明
泥沼の戦争がつづく近未来の中米。米軍砲兵隊特技士官ミンゴラは、潜在的超能力開発の訓練を受け、特殊部隊に参加する。彼を特ち受けていたのは、悪夢にも似た非現実的な世界だった。ジャングルの奥深く、墜落したヘリの中で息づく人工知能コンピュータ。戦争の背後に蠢く2つの氏族。謎の女デボラ…。現代アメリカ文学の俊英が魔術的リアリズムで描く、21世紀の「地獄の黙示録」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
53
『虐殺器官 新版』の大森氏の解説で紹介されていたので読みました。確かに近未来の南米を舞台にマジックリアリスムで描いた『地獄の黙示録』。互いに殺し合ってきた二家が船長ルイによって皆殺しの目に遭うことで初めて互いを助け合うことができたという事実が痛烈である。そして超能力の開発手術や薬物でトリップという状況下が語り部の見たこと、体験したことは本当なのかという疑いにも見舞われる。一方で革命主義に囚われているデボラの「なかったことにできない」ということも思想というフィルターを通して見たものでしかないという疑いもある2014/12/30
スターライト
14
最近『竜のグリオールに絵を描いた男』の刊行でふたたび注目を集めつつあるシェパードの第二長篇。発表が1987年と30年以上前であり、現在と当時の世界情勢とは異なっているが、中南米が第二のベトナム化の危惧された世相の中で書かれた本書は、絶え間ない戦火とゲリラ生活が描かれ読んでいてモヤモヤとした気分がたまってしまった。主人公のミンゴラは超能力を使えるのだがスーパーマンには程遠い。生きることの意味を必死にもがいている様子は伝わってくるが、結局デボラとの愛にしかそれを見出せないようでラストの二人のやりとりが切ない。2018/09/09
ヴィオラ
12
うーん…久しぶりに、読んでも読んでも終わらない感覚が…(^◇^;) 良く考えると「人間の意志が意外に簡単に操られちゃう」っていう展開が、シェパードさんの多くの作品に見られるのは何故か? 人の意志がそれほど脆いものだという事か?それとも、そこを乗り越えた先に人の未来があるという事か? なんて事を考えたりしたけれど、いかんせんどうにも読みにくい…(^◇^;) もう少し、もう少しで良いから理解を深めたいところ…。未来への宿題。2019/01/03
masabi
10
【概要】士官ミンゴラが近未来の泥沼化する中南米の戦争で女を追う。【感想】「虐殺器官」の解説で触れられており、気になったので読んだ。意識の操作、女を追うプロットなど確かに要素は似ているが、本書では薬や意識の変調による幻覚、神と宣う人工知能、陰ながら戦争に影響を与える二家の陰謀と反戦的、魔術リアリズムの色合いが強い。多くの人が揃ってパナマへ向かい、和平工作がなされていると囁かれ始めたときはここでも陰謀かと感じた。二家がそこまで戦争に影響を与えられるかすらあやふやだ。 2020/11/25
xsixisx
2
中南米、魔術的リアリズム、サイキック。知られざる良作。何年かに一度読み返す。
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- 和書
- 解析学序説 上巻