内容説明
殺された母の面影を胸に、クォーターマンと共に絶望的な逃走を試みるトマ。非情な追跡を続けながらも、少年の天才的な知性に魅かれていくレームレ。巧妙に張り巡らされた非常線をトマは突破できるか?トマに託された724の暗号とは何か?そして、クォーターマンの正体は?戦火の燃えさかるヨーロッパを舞台に繰り広げられる追跡と逃走のドラマ。異色の大型サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Cinejazz
11
ナチスの追撃から逃れた主人公<トマ少年>が、追跡者に惨殺された母<マリア>とアメリカ人実業家<デイヴッド・クォ-タ-マン>との関係が明らかにされる大団円・・・<パパ>という単語が「ダディ」として呼ばれる感動の幕切れに救われる・・・〝トマの胸から嗚咽がこみ上げてきた。まさしく大波のようにこみ上げてきた。嗚咽の大波はすべてを持ち去って、砕け散った。暫く、トマは身じろぎもしないで泣いていた。それから、体を横にかしげて、デイヴィッドクォーターマンの肩に頬を埋めた〟・・・2023/03/05
睡
2
(承前)「彼女」とともにトマを見守り、ともに闘った4人のスペイン人――特に最後まで付き従った「見えない男」――の頼もしさと言ったら! 彼らがいなければトマの氷壁のような冷静さもいずれ崩れてしまったことだろう。ミステリーという1ジャンルに留まらず、歴史について、愛情について、知性について、深く深く考えさせられる物語。世代を問わず楽しめるこれほどの傑作が、何故今絶版なのか理解に苦しむ。新潮社でなくてもよい。この素晴らしい作品をどうかもう一度、出版して頂きたい。2014/10/03




