内容説明
革命後の混乱を避け、ワルイキノへ逃れたジバゴ医師はラーラと宿命的な再会を果たす。身も心もラーラにのめり込んでいくジバゴだが、運命は二人を遠ざけていく。やがて全てに失望したジバゴはモスクワに隠棲し、〈ジバゴ詩編〉を残して狂気の内に死をを迎える。美しいラブ・ストーリーに様々なシンボルをちりばめ、普遍的な倫理と思想を織り込んだ20世紀最大の大河ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
370
上巻は全体のいわば序章であったようだ。物語は下巻から本格的な始まりを見せるのだが、そこには大きな断層があるようだ。すなわち、革命というロシア社会全体の巨大なうねりと、望むと望まざるとに関わりなく、その中に巻き込まれてゆく「個」との。それをとりわけ強く体現しているのはやはりユーラ(ジバゴ)だろう。もちろん、ユーラの背後にはパステルナークその人が透けて見えるのだが。彼はインテリゲンチャであるがゆえに革命の渦中にいることができない。そうであるが故の悲劇である。ラーラもトーニャもパーシャも、そしてターニャもまた⇒2021/05/15
のっち♬
151
混乱から逃れた先で不倫にのめり込むジバゴとラーラ。メロドラマとしての通俗性はプロットよりも抒情的感性を主体化してきている。救いを「形式からの解放」に見ていたジバゴは、同棲を経て戸外と屋内/自然と人間の交感の奥底に詩情を見出し、歴史を植物で類推。形式への美意識はキリスト教伝統を用いた詩にも現れている。自己表現が死と直結した情況においても愛を失わないが故に象徴的である人間の在り方を、詩という脱リアリズムなツールで普遍化した珠玉の巨編。性愛やロマン主義以上に詩表現に対して官能的次元でロマンを注いでいると感じた。2023/01/10
NAO
77
革命が起き、ロシアの人々の生活は大きく変化。だが、赤軍が勝っても白軍が勝ってもどちらも変わりはないという怨嗟の声は、あまりにも生々しい。革命軍に入ったパーシャが最終的には処刑され、ロシア時代からの弁護士コマロフスキーは革命後もうまくやっているらしいとうことでも、革命の意義はどれだけのものだったかと考えさせられてしまう。お追従者で利己的なジバゴ家の庭番が革命後裕福になり、落ちぶれはてたジバゴを養いながら「高等教育を受けてもこのざまじゃ・・・」と嘲笑する場面からも、作者の革命への不信と皮肉が感じられる。2019/03/16
よむよし
68
運命に翻弄されるばかりの、煮え切 らない知識人が主人公の物語として 読みました。 とにかく自分の人生を掴みにいかな い、人生を生ききるというのがない のでこちらがイライラしてしまいま す。 自分からパルチザン軍なり、白軍な りに身を投じる訳でもない。 農民となってその地に根付き、土と 共に生きる訳でもない。 本業の医師業を貫く訳でもない。 詩作に逃げこんでいるようにしか 見えない。 必死に生きようとしている家族や 愛人を見捨てたように見えるが、 実際は見捨てられたのではないか と思う。2023/10/29
みっぴー
58
広大なロシアの大地はどれだけの血を吸ってきたのだろうか…飢えや終わりが見えない内戦、ひたすら血生臭い下巻でした。激動の時代でも人の営みだけは変わることがありません。どのような状況下においても、男女が出会い、結婚して家庭を持ち子供を育てる…これって凄いことだと思いました。人間に植え付けられた本能の前には、思想信条なんて河原の小石程度の存在でしかないような気がします。人間って逞しいですね。映画も機会があったら観賞したいです。2016/05/23
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