内容説明
〈ある種の感染症〉により、放尿時の異常な痛みに苦しむ男、フレッド・トランパーは、古代低地ノルド語で書かれた神話を研究する大学院生である。将来の見込みは殆どない。しかもスキーのアメリカ代表選手ビギーを妊娠させたことで父の逆鱗に触れ、援助を絶たれてしまう。息子コルムも生まれたものの、トランパーの生活はいっこうに落ち着かない…。ファニーで切ない青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
57
ジョン・アーヴィング 2作目。「熊を放つ」がMy壺だったので早速読んでみた。題名を直訳すると水療法男子。主人公の青年、友人からは嘘つきって言われてる。その僕の真実は3ツ。①捻じれている尿道 ②君と僕の名前の由来のいい加減さ ③儀式を信じる 僕の人生にはいつも水療法があった。英語での“I”は日本語では私、俺、僕になる。日本語の方がキャラが豊かだ。主人公の“僕”のお陰ですんなり主人公に同化して読めるが「熊を放つ」の純朴な僕ではない。高学歴でレスリング部経験者なんだが口は達者でなかなかのクズ野郎?2020/12/16
メタボン
31
☆☆☆☆ 時系列じゃないので少し混乱しながら読み進めるうちに、ユーモアあふれるエピソードにはまっていく。中でもトランパーがスキーで突進するシーンや、リディア・キンドルとの性交が未遂となったあと裸で置いてきぼりにされるドタバタなシーンは笑ってしまった。トランパーの父からの手紙がどのような内容か気になりつつ下巻へ突入。2022/01/12
田中
18
前半は観念的な描写が多く、おやっと感じた。が、中盤からはアーヴィング節も発揮され笑いがこぼれます。ありえないけど、起きてしまえば、ありえそうな即物的活劇が最大の魅力。互いを気遣いながらも自分の意向も押し進めようとする会話の妙。それが過去や現在の切替ショットで細切れにストーリーを積み重なっていく。トランパー、ビギー、トゥルペン、ラルフらが立体化され、いとしい者になっていくのだ。と同時に彼らの繋がりも明らかになる。想い出が、想い出として。僕は、トランパーとビギーがホテルで出会う場面が一番好きだなあ。 2019/08/25
tokko
17
アーヴィングの小説は最初つまらなく、我慢して読み続けると覚えず夢中になっていることが多い。逆のパターンよりよっぽどいいと思うけれど、アーヴィングが意図しているところなのだろうか?エピソードの層の波の強弱バランスがうまい。村上春樹氏曰く「『ガープの世界』ほど完成度は高くないけれど風俗小説を切りきざんだような独特のワイルドな面白みがあってけっこう読み込める」とのこと。確かに『ガープ』や『ホテル』と比べるとあれだけど、素直に面白いですよ、これ。2014/07/01
まおまお
7
アメリカンジョーク満載のファニーな内容でした。とても映像的でアメリカ映画のワンシーンを思い出した。どこを切り取ってもアメリカ映画みたいなやり取り。ちょっと下品だけど、シュールであり楽天的な笑いの合間に滲み出るヒューマニックな描写、男女のすれ違い、おかしみなどがありました。アーヴィング作品はさらに良いものがあるようなので、ボチボチ読む予定。2014/08/16