出版社内容情報
巧みなストーリーテリングで、暴力と死に満ちた世界をコミカルに描く、現代アメリカ文学の旗手J・アーヴィングの自伝的長編。
内容説明
看護婦ジェニーは重体の兵士と「欲望」抜きのセックスをして子供を作った。子供の名はT・S・ガープ。やがて成長したガープは、ふとしたきっかけで作家を志す。文章修業のため母ジェニーと赴いたウィーンで、ガープは小説の、母は自伝の執筆に励む。帰国後、ジェニーが書いた『性の容疑者』はベストセラーとなるのだが―。現代アメリカ文学の輝ける旗手アーヴィングの自伝的長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅう
94
男性もセックスも嫌悪するジェニーはある特異な方法で受胎する。生まれてきた子は父親の名前を取ってT・Sガープ。成長したガープはやがて作家となる。この小説のテーマは欲望と死だ。ガープ自身欲望に支配されていて、彼の作品には死の影が色濃く立ち込める。作家であるガープは滑稽であることと真面目であることを同列と見做す。そのことがこの作品の中でも顕著に現れる。特に上巻の最後の章の「ラルフ夫人」はまるで喜劇のようでありながら痛切だ。相反するものを同じ熱量で切り取るのはアーヴィングのお家芸だ。2025/08/09
NAO
76
【誕生月にアーヴィングを】アーヴィングの自伝的小説だが、ガープを産んだいきさつや、作家を目指している息子より先にベストセラー作家になってしまうなど、母親の方がが強烈な個性を放って目立っている。アーヴィングの作品で頻繁に舞台となるウィーンで文章修業したガープの作中作『遅延』は、アーヴィングの『熊を放つ』に対応している。2018/03/04
Vakira
60
「抱く」と「抱かれる」。一般的な表現では抱くのは男性、抱かれるのは女性。女性の表現では「私はあなたに抱かれたいと」なるが「私はあなたを抱きたい」なんて言う女性表現はあまり聞かない。そこには男女の能動と受動の性差が存在する。これは生物としての基本の行動パターンだ。卵を持たない雄は雌を探し求め、卵を持つ雌は雄を受け入れる。このパターンを壊すとき、ドラマが誕生する。セクシャル・サスペクツ。「性の容疑者」の始まり始まり。先ずはガープ誕生秘話。ストレンジガールの母さんの人生。セックスも男性も嫌悪。でも子は欲しい。2023/07/31
中玉ケビン砂糖
55
、感想は下巻にて、、、2015/03/02
Small World
48
アーヴィングは「ホテル・ニューハンプシャー」に続いて2つ目ですが、読み始める前に、あらすじを読んでも今一どんな話なのかわからないのは同じですね。w 登場人物たちは生き生きしていて面白いんですが、どこに向かう話なのか上巻では、見当もつかないのがアーヴィングらしさなのかもしれませんね。今のところ話は夫婦やセックスのことが中心で「ホテル・ニューハンプシャー」に漂っていた濃密な死の香りは感じられませんが、この後はもしかして、って予感がしながら下巻に進みます。2018/07/25