内容説明
ベッドの枕に置かれた封筒。中には祝福の手紙(「きみはついてるな!」)と25セント硬貨。チップとも呼べない少額すぎるそのコインが、ホテルのメイドにもたらした幸運とは…市井の普通の人間に訪れた特別な瞬間を、名人芸の手業で描いた標題作ほか、天才キングが十年をかけて、瞬間瞬間の全精力を傾注して彫琢した傑作揃い、意外な結末ばかりの全七篇。全篇キング自身の解説つき。
著者等紹介
キング,スティーヴン[キング,スティーヴン][King,Stephen]
1947年メイン州生れ。貧しい少年時代から恐怖小説を好む。高校教師、ボイラーマンといった職業のかたわら執筆を続け、’74年に『キャリー』でデビュー。好評を博し、以後『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを生み、“モダンホラーの帝王”と呼ばれる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
442
スティヴン・キングにはやや珍しい短篇集。7つの作品を収録。キングはこれまでに『ミザリー』を読んだだけなので直感的な比較に過ぎないのだが、『ミザリー』が持っていたような息つく間もない、しかもいつ果てるとも知れないスリリングな情動には欠けるように思う。短篇だと構成の結構を考えすぎるのであるのかもしれない。たしかに構成はよくできている。否、むしろ出来過ぎているために予想を裏切らないのである。その意味では「例のあの感覚…」の持つ、無限軌道のような感覚が構成の枠を破る1篇だろうか。2022/01/31
Tetchy
148
短編集“Everything’s Eventual”を二分冊の後半部が本書。なんだか割り切れない結末の物語が多いと感じた。物語が終わった“後”を考えさせるものが多かった。そういう意味では余韻を残す、いや読者に考えさせる余白を残す作品群だった。ある意味それは人生そのものであるとも云える。今回最も恐ろしかったのは「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」を挙げたい。ネタバレになるので詳しい理由は書かないでおこう。これまでになく収録作のジャンルがヴァラエティに富んでおり、多様性に満ちた作品群だった。2023/07/25
ケイ
143
キングは少し意地が悪いのだろうな。ほら気味が悪いだろ、どう?って思ってる気がする。それと、生意気な女(男は無意識で酷いことはしていても本人は善良で女を愛しているちもかかわらず...)に対し、懲らしめてやろうって気持ちを作品の中で果たしているんじゃないかしら。この短編集では、苦労する女性へのあたたかい視線をかんじる表題作が好き。そして、最初の『なにもかもが究極的』については、とても完璧だと思った。まあ、最終的な解決にはならないのだとしても。2019/05/04
キムチ
67
キングの短編は小骨が多くてお粗末な頭では咀嚼になかなかエネルギーを要す。映画化された「1408」を文字で味わいたくって選書。キューザックの演技も然ることながら、キングの筆は流石の逸品。7編が収録されているが短編とはいえ小捻り技が効いている。「路上ウィルス」にハルキさんでおなじみのオールズバーグが出てくる・・あの絵はホラー感合致だねと笑えた。表題作品は悍ましさの最期に放った清涼剤かも。「だって、運が味方に付いているんだもん!」これよね、前向き思考。何時かはドキュンしかねない考えだけどストレスはたまらない。2024/06/23
がらくたどん
62
何度も書くが『スタンドバイミー』と『キャリー』しか読んだことがなかった大王事始めを豪華アソートボックスで♪『第四解剖室』の続きは七つの短編。SFでもホラーでもちょっとウフフな物語でもとにかく饒舌で時々「黙れ!」と叫びたくなるが、物語の案外とシンプルな骨組みとこの満艦飾な言葉の群れとの組み合わせで、分かりやすいのに全然陳腐じゃなくていくらでも聴いていられる。特殊能力を買われた少年のバイトは闇バイト?と心配になる「なにもかもが究極的」現実に起きた事を想像すると震える「L・Tのペットに関する~」→2024/10/13