内容説明
クリスティーンの周辺では次々に血腥い事件が起きた。アーニーやクリスティーンを傷つけた者は、無残な死を遂げた。アーニーは顔付きも性格もすっかり変り、親友のデニスは何とか彼をクリスティーンから引き離そうとするが、逆にクリスティーンから命を狙われるようになった。みずみずしいティーンエイジャーの日常生活を背景に、まがまがしい恐怖を余すところなく描ききった長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
139
クリスティーンが、復讐を始める。とはいっても、車なのだから、それなりに怖さはあるけど、ちょっと無理があるかも。 その実態に気づいた青年との最後の決戦が始まるわけだけど、この辺りはまがまがしい恐怖感があって面白い。 まあ、最後にはこうなるのだろうと言う感じで割とあっさり終わったけど、それなりに楽しめた。 クリスティーンに取り込まれた青年の行方が多少残念かな。もう少し違う方向でもよかったかも。 あと、作家自身が、こういう終わり方に多少心残りがあったのか、エピローグがついてて読者にはうれしいプレゼントですね。2020/10/15
Tetchy
129
これは私の憶測だが、「あの人は車を運転すると人が変わるよね」、そんな身近な恐怖が本書の発想の根源だったのではないか?また人の物に対する執着というのは物凄いものがある。古来死者が生前愛でていた物に所有者の情念が宿るという怪奇譚は多々あるが、その対象を58年型のプリマス・フューリーという現代的なアイテムとしたことにキングの斬新さを感じる。自動車産業国アメリカが生んだ意志宿る車による恐怖譚。車に対する愛着が深い日本人にとってもこの怖さは無視できない。たかが車、と一笑できない怖さが本書にはいっぱい詰まっている。2018/05/23
chiru
87
最後まで読み手の想像力に訴えかけてくる小説でした。 ジャンルはホラーだけど、自分の殻を破る成長の痛みを描いた、男の子の成長物語でもあります。 男同士の友情を壊すのは女性というよくある青春設定と、車イコール女性(欧米ならでは?)をうまく融合した結果、ホラーとしてもジュブナイルとしても成功してると思う。 特に好きな優しいシーンは、デニスとアー二―が食べ物の思い出話をするところ…感涙です。そして、静かな余韻が心地いいエピローグに、苦い後味を残す幕引きもさすがでした。 ★52019/03/02
リリー
19
翻訳物でも読みやすくて楽しめた一冊でした。特に下巻は一気に読めました。車が人間の心をもったようにように動き回り、殺戮を繰り返すくだりは恐ろしいが、さすがスティーブンキング、ティーンの友情、当時のアメリカの様子など興味深く楽しめました。 2015/07/10
richiy
19
大団円とは決していえない悲しい結末だけど、これで良かったとも思う。とりあえずデニスとアーニーにはお疲れ様と言いたい。思わず主人公2人に愛着をもってしまう文章なので、もっと幸せな結末になって欲しかった反面、このほろ苦さもこの小説の魅力なのかも。タイトルでもある曰くつきの車「クリスティーン」はもちろん怖いけれど、彼女を生み出すに至った所有者のやむことのない怨念、それは人なら誰しもが持ちうる身近な感情であることにも考えるものがあります。2015/05/25