新潮文庫<br> イギリス人の患者

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新潮文庫
イギリス人の患者

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  • サイズ 文庫判/ページ数 392p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102191118
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

322
1992年度ブッカー賞受賞作。プロットも、語られる場も複合的で、時間軸もまた単線的ではない。物語における現在の場の結節点となるのは、フィレンツェ近郊の丘の町にあるサン・ジローラモ屋敷だが、その背後にはシナイ半島からエジプトにかけての砂漠の空間があり、ロンメルの夢やスパイたちの思惑が交錯していた。あるいは「喪失」こそが、本書のキー・イメージであるかも知れない。登場人物たちは皆が一様に人生における何かを失っている。まだ20歳と若いハナにしてもそうだ。そして、我々読者もまた、何かを失っていたことに気付くのだ。 2016/01/08

ケイ

155
最後に、戦争の終わりの虚しさを感じた。舞台となるフィレンツェもカイロも、イギリス人の患者が墜落した砂漠も、どこもとても静かで神秘的だ。フィレンツェ近郊の廃墟に身を寄せる年齢も国籍もバラバラの四人。みんな戦争で傷付き、不完全になっている。しかし、戦争が続いている事が、彼らの非現実的な日常を持続させているようにも思った。日本の降伏で終焉を迎える戦争。彼らはどのやうに対峙していくのか。かなしくたゆたう夢の中にはおられない。2017/02/11

zero1

107
これが文学だ。格調高い文章があるとすればこの作品。再読でもそれが分かる。舞台はWW2末期。砂漠の墜落事故。全身大やけどで包帯だらけの患者と看護師ハナ。そしてシーク教徒の工兵キップに看護師の叔父と登場人物は少ない。やがて看護師は工兵と恋仲に。患者は何者か?というのが底辺にある謎。92年ブッカー賞受賞作で映画「イングリッシュ・ペイシェント」が有名(後述)。結末の怒りについては日本人なら共感できるはず。何故、一介の工兵が最高軍事機密を知っていたかという疑問は残る。絶版のためかレビューが53件なのが不思議な秀作。2020/05/10

(C17H26O4)

83
読み終えたくなかった。傷ついた者たちの話をずっと聞いていたかった。3人の男と1人の女の話を、あたかも自分が彼らと暮す仲間のひとりであるかのように。語られた過去もついに語られなかった過去や思いも、彼らの関係が終わる予感があるからなおのこと貴い。「言葉だ、カラバッジョ。言葉には力がある。」イギリス人の患者は言った。そうなのだと思った。言葉なのだ。あるいは、オンダーチェの文章なのだ。2021/03/25

zirou1984

51
滑らかに流れる言葉が砂漠のように乾いた皮膚に染み込んでいく。ひび割れた悲しみを繊細な文体が包み込んでくれる。読んでいる間中、筆舌に尽くしがたい昂揚感に幾度となく襲われていた。第二次世界大戦末のイタリアの修道院を舞台とした、4つの破壊された人生の物語。それは時に支え合い、寄り添い、そして時にすれ違う。個人はいつだって歴史の力には無力で、国境や人種は嫌が応にも人々を無理解という病に溺れさせる。しかし本当の優しさや美しさはいつだって、そんな痛みの向こう側から生まれてくるのだと教えてくれる素晴らしい傑作であった。2015/06/07

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