内容説明
不世出の文豪・トルストイ。彼の標榜する理想主義の実現を願う高弟・チェルトコフに対し、妻のソフィヤは夫に良き家庭人であることを求め愛情や財産を独占しようとする。理想と愛の相克に苦悩し続けたトルストイの決断とは―。名もない駅の片隅で謎の死を遂げた文豪。その最後の日々を書簡と日記から再現し、生の真の意味を問う感動の伝記物語。
著者等紹介
パリーニ,ジェイ[パリーニ,ジェイ][Parini,Jay]
1948年、アメリカ・ペンシルヴァニア州生れ。ヴェトナム戦争時代のアメリカを嫌って出国し、スコットランドのセント・アンドリューズ大学に学んで博士号を取得。詩集、小説、評論の著作がある。オックスフォード大学客員研究員
篠田綾子[シノダアヤコ]
1927年、上海生れ。東京大学文学部英文科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おか
56
トルストイの最晩年を色々な文献を再構築して書かれたフィクションであるが とても良く纏められていると思う。「古今の三悪妻」ソクラテスの妻クサンチッペ、モーツァルトの妻コンスタンツェ そしてこのトルストイの妻ソフィア。悪妻という括りが良く理解できない私(//∇//)トルストイの場合もソフィアは全ての版権を民衆のものにというトルストイのある意味無責任な行動に精神のバランスを崩された様な気がする。自分は若い時から好き勝手やって自分が死んだら妻子はどうにでもなれと言っている様な、、、トルストイさん 矛盾してまっせ2017/10/16
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
27
トルストイが小さな駅で死ぬ一年前からの、周囲の人たちの手記から書き起こした小説。トルストイ狂信者という感じの主治医、弟子、娘、これらの人にトルストイの死後の版権を奪われるのではないかと狂乱する妻ソフィヤ、そしてトルストイ自身。80歳も半ばを過ぎたトルストイは有名になり過ぎて常に取り巻きやファンに取り囲まれる生活に疲れ、ソフィヤのDVめいた執着や疑いから逃げ出したいとばかり考えている。幸せとは言えない文豪の最後の日々。2021/04/12
ののまる
12
むう。聖人化されて長生きしすぎたのかも、と思うことも。ソフィアからの要望もわかることはわかる。2019/03/18
Satoshi
11
晩年に謎の失踪をし、駅で客死したトルストイ。彼の周囲の手記とトルストイの日記と手紙から構成されている。理想を求めるトルストイと彼を盲信する三女、主治医、弟子。そして、悪妻と名高い妻のソフィア。遺産を奪われるのではないかと疑心暗鬼になるソフィアが何だか哀れに見えてくる。俗な私にとっては、彼女は同情の対象だ。周囲から神格化された人物とその家族の悲劇を描いた名作だと思う。2021/05/19
しーもあ
10
トルストイの最晩年を家族や秘書たちの手記から描いた作品。一応フィクションと断ってあるが、ほぼこの通りなのだろうと察する。トルストイは最期突然出奔し、駅でのたれ死んだと思っていたが、本書を読むとイメージと違った。世界三大悪妻といわれるソーニャにもまあ一部の理はあるが、いろいろと頭おかしいw トルストイはトルストイで、理想と現実の行動が一致しておらず、このことで彼自身を苦しめていったというのがよくわかる。映画化もされている作品だけど、トルストイのことをある程度知らないと楽しめないと思う2016/09/03