出版社内容情報
典型的なデカダンスの詩人ヴェルレーヌは、市民意識の高揚する激動のパリに生き、霊肉の相剋に苦しみ敗残の姿をさらしながら、独特の音楽的手法を駆使した斬新な詩的世界を確立した。本書には、明快な表現と優雅な感覚に富む第一詩集『土星の子の歌』、短かった幸福な日の形見草『やさしい歌』ほか『艶かしきうたげ』『無言の恋歌』など、詩人の永遠の魂の歌を網羅した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
105
争闘も悔恨も羨望もなくてよかったに、そうと知っていたのに、報われなかった、守れなかった人生を想うよ。愛すべきは自分自身だったんだ。この夢想家は瞑想に迷走した名僧だったかな。2021/04/24
イプシロン
44
「選ばれて在ることの恍惚と不安とふたつわれにあり」。太宰が引用したことでヴェルレーヌを知る人は多いのかもしれない。またノルマンディー上陸作戦の決行・中止を仏国レジスタンスに伝えるためにラジオ放送された『秋の歌』で知る人も多いか。あるいは、ドビッシーが作曲したベルガマスク組曲『月の光』として知る人もいよう。自然の美、愛や喜びを歌った詩は美しいが、多くの詩には退廃が色濃く滲んでいる。しかしそれは、ヴェルレーヌの魂が世界に対してあまりにも敏感だったゆえであり、芸術家が抱えてしかるべき宿命的な資質だったのだろう。2019/10/20
cockroach's garten
24
瑞々しいほどのヴェルレーヌの感覚が満ち溢れていて美しい。後半の方に進むに連れてヴェルレーヌの私生活とリンクして詩も暗い色彩が中心になっていくのは物悲しくも思えた2018/06/07
風に吹かれて
22
詩人がどんな人なのか予備知識なしで読み始める。下部に注釈があり参照する。 人生を生き始めた人のひりひりする様な繊細さ(『土星の子の歌』)、恋したときの、すべてを肯定できるような全能感(『やさしい歌』)、ランボーへの傷害事件による刑務所暮らしで宗教詩(『知恵』)、そして、それ以降の詩は飲酒するための売詩しか生み出せない…。人生そのものが詩のようなヴェルレーヌ。 最期がどのようなものであったとしても、読み継がれる詩を書いた。十分じゃないか。➡2021/04/14
かふ
16
ヴェルレーヌは、ランボーと出会ってデカダン生活を送り、ランボーとのトラブルで拳銃を撃って牢屋に入れられて妻からも離縁されてしまいます。その時の「無言の恋歌」の気持ちが痛いほど分かると思ってしまうのは、失恋経験者だからでしょうか?最初の方の詩はお花畑すぎてよくわからなかったけど。わからないと思ったら素直に解説から読むといいと思います。2022/02/13