内容説明
少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の“しるし”を残して―。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは?組織の規律とは?個人の尊厳とは?そして家族の絆とは?葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。CWA賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
533
スターリンが亡くなってもレオとライーサを巡る状況は何も変わらない。それどころか、一層に逼迫した中で、物語は彼らによる子どもの連続殺人の解明と犯人追跡に向けて加速度を増してゆく。スリリングであることにおいては上巻を上回るだろう。犯人像については、そうした設定の必要があったのかはいささか疑問も残るが、上巻・下巻を通しての一貫性という点では見事に結実する。今後のフルシチョフ体制には、今のところ希望が持てなくもない展望を残すが、さてどうなるものか。エンディングは実に心憎いまでに静謐な余韻を残す演出である。2021/05/19
遥かなる想い
374
下巻は、壮絶な再生の 物語だった。理想の国ソ連では 「この国に犯罪は存在しない」 という建前の下、殺戮が 続く。実際に ソ連であった大量殺人事件に 着想を得たらしいが、改めて 何が正しく、何が誤っているのか わからなくなった社会の狂気を 感じる。 国家のために無実の人間を 摘発する立場だったレオが、 立場を変えて真犯人を追う 再生の物語として読めば、 救いはあるのか… 「最も信頼している人を疑え」 中国の文化大革命をも想起させる 物語だった。 2014/01/19
星落秋風五丈原
200
「社会主義(国家)に連続殺人鬼は存在しない」とのたもうた高官に尋ねたい。あなたの告げるその社会主義国家には、無残にも殺されていく子供達は含まれていないのか、と。本来は、国家は後に、国民が先にあるものなのに、この場合は逆だ。綺麗なものだけでできた国家を、そのような国家が見たい権力者・為政者達が無理やりかたち作ろうとすれば、こうなる。一部の人達が満足する国家は、その他大勢の国民達の心を見ていない。ああ、やはり、どこか他の、昔の事ではなく、ごく身近に似たような事態が起こっているような気がしてならない。2008/09/16
よむヨム@book
167
★★★★☆ 星4つ この下巻より、レオとライーサとの殺人事件の本格的な捜査が始まる。 この事件は、サスペンスものであるが、動機という一部ミステリー部分が含まれている。 察しの良い人は、上巻で感付いている方もいるのではないだろうか。 私は、レオとライーサとの夫婦関係の再構築の物語として読んで面白かった。2022/06/08
みんと
128
ロシアでは発禁となっているこの書は実在の事件に着想を得て書かれたものらしい。 上巻でぐんぐん引きこまれた重圧的な雰囲気と殺人の残忍さに下巻でも読む手が止まらなかったのだが、犯人像が明確になるにつれ、予想もしなかった展開に驚きとともに笑ってしまった。 こんな陳腐な理由で大勢の人間を殺すことができるのだろうか。 レオとライーサの関係が良い雰囲気へと修復されていくのが救いだ。2015/10/01