内容説明
突然真っ白な猫になってしまった少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの町へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ―でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。猫好きな著者ギャリコが、一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して、猫好きな読者たちに贈る、すてきな大人の童話。
著者等紹介
ギャリコ,ポール[ギャリコ,ポール][Gallico,Paul]
1897‐1976。ニューヨーク生れ。スポーツライターを経て作家になる。1941年に発表した『スノーグース』で一躍有名となった
古沢安二郎[フルサワヤスジロウ]
1902‐1983。新潟県生れ。東京帝大英文科卒。英文学者。芸術派の新進作家としても注目された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
163
猫に転生した少年を通して猫の習性、猫の生活を描写し、気まぐれな猫の世界を冒険小説のように起伏をもたらして描くところにギャリコの物語作りの巧さが光る。そしてこの少年ピーターに人生ならぬ猫生を教えるのが雌猫ジェニィ。この2匹の交流を通じて描かれる猫の生態や生き様は実に鮮やかで猫がたくましく、そして時に強かに人間社会で生きていく姿がとにかくリアル。この2匹が冒険を通じて親子のような関係から“運命の2匹”へと発展していく。そして単なる大団円に終わらない結末は大人のための寓話と呼ぶに相応しかった。ああ、切ない。2025/04/23
匠
158
495ページあるやや長編小説で翻訳モノだったため読む前は敬遠していたのだが、比較的読みやすい翻訳で内容も素晴らしかった。ロンドンに住む少年ピーターがある日、白猫になってしまうところから始まるこの小説は起伏に富んで飽きさせず、猫世界の掟や実態を通して愛と勇気を学ぶ冒険&成長物語になっている。行動を共にする雌猫ジェニィの聡明さと気高さ、愛情は元々ピーターの母親像が投影されているのだと思うと色々納得でき、またデンプシィと決闘した時に発揮した逞しさは大佐である父親から無意識に受け継いでいるものがあるように感じた。2014/02/10
小梅
126
ギャリコは猫を描くのが上手いなぁ~ 少年が猫になっちゃうなんて非現実な設定でも、人間の気持ちと猫の気持ちを上手く表現していて、私まで猫になったような気持ちになりました。猫になった少年に献身的に寄り添い猫としてのマナーを教えていくジェニィが素敵(*^_^*) 時々ウルッとしてしまいました。続けて「トマシーナ」を読む事にします。2014/05/17
mocha
121
ピーターとジェニイの冒険はとてもスリリング。ストーリーの中にねこの細かい仕草が無理なく溶け込んでいることに、並々ならぬ力量を感じる。比類ない観察眼とねこ愛のなせる技だろう。気持ちがすぐに切り替わるのも、ねこの世界らしくていい。ラストの30ページくらいからは読むのがつらかった。ねこ界も人間界も、ひとりで生きていくのは大変だ。2017/02/26
ちょこまーぶる
101
外国文学は苦手なんだけど、100冊目ということでチャレンジした。ギャリコさんは本当に猫が好きで、全編を通して猫の生態・特性を細かく表現されていて猫の専門書を読んでいるようにも思えた。この本は、猫になってしまったピーター少年が、雌猫ジェニィと出会って、家族・人間そして雌猫を「愛する」「信じる」ということを分かり易く表現しているように私には思えた。また、人間不信に陥っていたジェニィに対して人間の素晴らしさを諭すシーンとジェニィのために暴君猫との戦うシーンなどは大切な何かを教えられた気さえする一冊であった。2013/11/09