内容説明
妻の反対を押し切って引っ越した屋根裏部屋から近くの学校の女学生の姿を楽しんでいた画家は、やが小鳥を飼い始めた。それを口実に少女たちを部屋に誘うが、自分のものを見せたい衝動を抑えられない―表題作ほか全13編収録。ヘンリー・ミラーとの奔放な愛に生きた美貌の女性作家ニンが、一人の老人コレクターの楽しみのために匿名で書いた、繊細で脆く、強烈で妖しいエロチカ。
著者等紹介
ニン,アナイス[ニン,アナイス][Nin,Ana¨is]
1903‐1977。パリ生れ。11歳のとき両親の離婚によりアメリカに移住し、そのころから日記を書き始める。20代になってパリに戻り、モデル、ダンサー、精神分析などで生活費を稼ぎながら、創作修業をする。ヘンリー・ミラーと過ごした日々を赤裸々に描いた「日記」を発表して一躍有名になる
矢川澄子[ヤガワスミコ]
1930‐2002。作家、詩人、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
144
デジャブ感は、「デルタ・オブ・ヴィーナス」とともにある老人のために書いた性愛ものだったからだ。若い男女の激しい肉体関係というより、多分にファンタジックでエロティックなイメージが浮かぶ短編たち。文学とは違うから特に感情に触れてはこないが、各短編の末尾の数行が残す美しい余韻は、書かされている性愛小説に対する作者の愛かしら。高度な技術を持つ訳者はこのような翻訳をしないのだろうか、言葉選びが稚拙な所があってエロスに入りきれなくする。解説のしをんさんの文章は、あからさまなのに正しい言葉選びで、その対比にニヤッとした2017/03/16
ヴェネツィア
124
アナイス・ニンは初読。本書はエロティックな13の短篇を集めたもの。元来は老人コレクターの楽しみのために匿名で書かれたものであるらしい。だとすると、男性の読者を想定していたことになるが、視点はやはりあくまでも女性作家のものだ。おそらくはエロティシズムの位相が違うのだろう。読者の想像力にエロティシズムを喚起するという点では、バタイユやレアージュには遠く及ばない。もっとも、女性の読者からすれば、そうした点での評価あるいは変わるのだろうか。また、物語のいずれもが幾分表層的であり、背後に観念の深みのないのが残念だ。2013/10/11
けぴ
55
女性作家による官能短編集。フランス出身の方なので濃い描写も美しく描いています。『砂丘の女』、『サフラン』、『家出娘』が特に印象的でした。2021/06/16
こばまり
46
先日帰省した際に持ち帰り【再読】。解説で三浦しをん氏は限られた紙数に“エロ本”と4回も用いる程にハイテンションなのですが、私にはむしろさらりと清々しく感じられるのでした。等と煮豚を煮ながら読み返していた私。アナイス・ニンも草葉の陰で激怒です。2015/05/06
藤月はな(灯れ松明の火)
45
(過激感想、注意!)三浦しをんさんの書評を読んだ時に「読みたいな・・・」と思いつつも「高校生でポルノ小説を読むのはアカンよね」と思い、早数年。成人し、同人誌も読んで耐性も付いたのでようやく、読みました。なんだ、用語が赤裸々なだけでエロスって言ってもあっさり目じゃない!「リナ」は「こういうなんか、自己中心的な女、いるいる~」って感じなのでちょっと、小気味よくも後味が悪いかも。「二人姉妹」のエドナの婚約者を図らずも寝取っていた頃の方が燃え上がっていたのに結婚した途端、不能になったドロシーの描写も中々、リアル2017/03/29