新潮文庫
贖罪〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 318p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784102157237
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

現代の名匠による衝撃の結末は世界中の読者の感動を呼び、小説愛好家たちを唸らせた。究極のラブストーリーとして、現代文学の到達点として―。始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは。傑作の名に恥じぬ、著者代表作の開幕。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

359
最初の人物造形が随分丁寧である。カバー裏に登場人物の紹介があるので、ブライオニーが主人公らしいとは思うものの、姉のセシーリアや母親のエミリー等にも相応のページ数が割かれていて、確信が揺らぐほどである。物語もまた平行的に進行し大きな起伏がない。ところが、上巻の終盤にいたって一気に急展開を迎えるなど、実に思いがけない構成を取る。タイトルの意味も、その時におおよそ推測されるのだが、あるいはこれもまた意表を突いた裏切り(作者のたくらみ)に会うのかも知れない。下巻への期待は高まる。2018/10/14

ケイ

141
語り手が入れ替わることで、時間が一本に進まず、少しずつ交差したり、重なったり…。それが生む効果により、一つの物事に対する見方が視点により変わることも、各々の思い込みの違いもはっきりしてくる。憎らしいように思える子供たちは、だんだんと子供なりの弱さや心の華奢さを露呈し始め、それぞれを愛さずにはいられなくなる。少女の思い込みと残酷さは、サガンの「悲しみよこんにちは」のように悲劇を生む。この作品の方が、悪意が介在しないだけに生み出される悲劇はよりむごく感じられる。ああ、なんて責任をとれない大人達の群れだろうか。2016/04/05

(C17H26O4)

101
なかなかストーリーが見えて来ない中、読むにつれタリス家の人々それぞれの性格や置かれている立場が次第に浮かび上がってくる。精緻でやや硬めな文と、人間関係や性格や誤解がもたらす滑稽とも思えるような場面とのギャップに面白味を感じた。末娘ブライオニーの年齢的、精神的幼さが故の短絡的思考は危うい(だが理解もできる)。そして終盤、「贖罪」というタイトルに後々繋がるだろう大きな事件が起こる。誤解や思い込みでは済まされない悲劇的な状況へと急展開し、雰囲気も一変する。下巻へ。2020/01/30

扉のこちら側

84
2016年731冊め。【206-1/G1000】13歳の少女というと「いつか白馬の王子さまが」的な空想たくましい一方で現実における自分の能力だとか立ち位置だとかに残酷にも気づき始める頃。しかし彼女が文学的才能に溢れ、現実と妄想に近い思い込みに上手く区別をつけることができなかったが故に、無実の青年が罪を着せられてしまうことに。少女と姉と母、三人の女性の書き分けが巧み。下巻へ。2016/09/18

naoっぴ

81
丁寧な人物造形に圧倒される。各人物の視点から描かれる日常は、同じことを見つめながらどれひとつとして同じものはなく、それぞれの思いの間のわずかな齟齬、わずかな思い違いが積み重なり、次第にひりひりとした緊張感を生み出していく。若い男女の恋の緊張感ときらめきに心躍り、一方では物語を書くことで神の視点を得たと自認する少女ブライオニーの、幼い観察眼と暴走気味の想像力に薄気味悪さを感じる。細やかに描きだされる登場人物たちの心の動きが面白くてやめられない。2019/03/12

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