内容説明
あまりに違う二人が傷つけ合うのは必然だった―。家族と希薄な関係しか築けなかった父。夫との愛に挫折した母。物心ついたときには離婚していた両親との激しい葛藤や、初めて同性に夢中になった初恋の熱。死に寄り添うホームケア・ワーカーを描いた感動作『体の贈り物』でラムダ賞などを受賞した著者が、少女時代を穏やかなまなざしで振り返る、みずみずしい自伝的短編集。
著者等紹介
ブラウン,レベッカ[ブラウン,レベッカ][Brown,Rebecca]
1956年、アメリカ生れ。シアトル在住。『体の贈り物』でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞を受賞
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生れ。東京大学教授。アメリカ文学専攻。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞受賞。『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞受賞。アメリカ現代作家を精力的に翻訳するほか、文芸誌「モンキービジネス」の責任編集を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
222
自伝的な要素が多いとされる小説。13の連作短篇からなるが、語り手である「私」の回想が、彼女のそれまでに送ってきた人生からアト・ランダムに語られるという形式をとっている。したがって、物心のついた幼児から、しだいに大人に成長してゆくという構成は取らない。このことは、小説全体にわたって詩的な趣きを与えることになった。篇中で最も抒情的なのは「ナンシー・ブース」で、主人公が彼女によってレズビアンに目覚めたくだりだろう。なお、父親との関係が繰り返し語られるが、それは彼女にとっては極めて両義的なものであったようだ。2015/05/19
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
49
レベッカ・ブラウンの自伝的短編集。幼い頃の家族との思い出、両親の不仲、離婚、父へのわだかまり、他の女の子たちとは違うと気づいた初めての恋、青春時代、母の病気と看取り、父の死など……。『ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ』では頬が熱くなりドキドキした。『ある戦いの記録』の痛みを伴う描写は読んでいて苦しくなり、『受け継いだもの』でグウッと沈み込むような気持になってしまった。身体に影響を与える小説でした。2016/08/19
こばまり
49
人生の断片を切り取る作家として、エキセントリックな詩人として、毎度さり気なく現れては大きな印象を残していくレベッカ・ブラウン。今回はレズビアンとしての目覚めを書いた2編が殊の外。私はヘテロセクシャルの筈なのですが読み終えた時喉がカラカラになって、自分がどこにいるのか一瞬分からなくなる程でした。2015/12/23
真夜中
11
レベッカ・ブラウンの瑞々しい感性によって綴られた本作、一編読み終えるごとに鳥肌が立って泣きそうになってしまった。どうして彼女の文章はこんなに私の心を鷲掴みにするんだろう。私と彼女は全然違う環境に育ったはずなのに、彼女が過去に抱えた(と思われる)感情がひどく懐かしく感じた。(「本を読むことによって救われる」ってこんな感じなのだろうか。)余談になるけれど、レベッカ・ブラウンの小説を読むとジリアン・タマキとマリコ・タマキのコミック『GIRL』を時々思い出す。(どうやら日本版は絶版になってしまったらしい。)2016/09/05
かな
9
家族と自分との関係が主なテーマの自伝的短編集。 幼い頃は父親に反感を抱くことがあっても、年齢を重ねるにつれて、その存在を肯定的に受け容れられるようになるのは、娘なら多かれ少なかれ経験することなのかな。 『ある戦いの記録』『そこに』は、正直難しくてよく分からん!ってなったけど、あとがきにあるように"呪文のようなリズムを持った文章"を楽しむだけでもいいのかな。。。2019/11/07
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