内容説明
大手製薬会社で唯一の女性プロパーとして働くシーリアは、医者たちに新薬を紹介するこの仕事に情熱を注いでいた。利潤追求のみを目的とした新薬開発競争を目にし、男性社会が持つ様々な偏見や障害と闘ううちにも、彼女の健全な良心はしぼむことがなかった。アメリカの製薬業界で、鋭い直観力と強烈な野心を武器に成功していく1人の女性と、その周辺に展開される多彩な人間ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
118
大手製薬会社でセールスウーマンから成功していくシーリアをヒロインに据えた米国製薬業界の人間ドラマ。物語は1957年で幕を開け、サリドマイド、OTC大衆化、遺伝子研究など製薬にまつわる問題が次々扱われる。上司との関係も著者夫婦を反映した結婚生活もかなり平穏で、ヒロインは鋭い直観力と堅固な野心を武器に男性社会の偏見や障害の中で着実に昇進。この点上巻の主軸はスリルと起伏に欠ける平坦なもの。寧ろ、薬物中毒の医師、名声に執着する開発部長、現実を見ない遺伝子研究者など脇役の精神的病巣が業界の闇を代弁していて印象深い。2022/02/17
James Hayashi
26
米国での女性の社会的進出が進み始めた時期の、製薬業界におけるプロパーの活躍を読み通すことができる。家庭を取るか仕事に専念するかという社会的選択を物ともせず両立させていく強き女性を見れるビジネス書。または製薬業界がside effectを考慮せずサリドマイドを売り続けたり、70年代にはアルツハイマーの研究をしている事には驚かされた。兄が業界に関わっているので興味はあったが、古さを感じさせない力強い文章。下巻へ。2016/06/14
mawaji
11
ほぼ30年ぶりの再読。医薬情報担当者がプロパーと言われていた時代の物語。当時女性が特に少なかった職種でのシーリアの活躍っぷりはまさにmedical representativeと呼ばれるにふさわしく内容的にも殆ど色褪せていないというか、サリドマイド禍の教訓など自戒の念を込めて日々振り返っておくべきことも多いように思われます。一旦基準を曲げてしまったら、それが新しい基準になってどんどんかけ離れたものになってしまうのですね。読んでいるうちにいろいろと思い出してきましたがハッピーエンドであったと信じつつ下巻へ。2017/09/16
東森久利斗
5
「過失は知識の欠如ではなく、判断の誤りである…」英国の哲学者ジョン・ロックの「人間悟性論」が引用された一行に本書のエッセンスが凝縮。政治と医療、ドラッグ・ラグ/ロス、安全とリスク、製薬会社における利潤追求と社会的使命との調和、個人の欲望と倫理とのバランス、企業における女性の進出、今も変わらぬ永遠のテーマ。重厚な内容を、魅力的なキャラクター、軽快なテンポ、スリリングな展開で読ませるストーリーテリングの妙。女性管理職比率、日本は11.1%で96位、残念。2024/09/26
Crystal.B
4
アメリカの医薬業界を巡る話ですが、現在にも共通する問題がたくさんありました。女性の社会進出は日本よりずっと早かったのだと思っていましたが、シーリアはちょうど私の母の世代と思われ、この時代だったのかと感慨もありました。ここでは彼女が関わる大きな事件はさほどなく、下巻に期待。これからトップまで上り詰めるのでしょうかね。重厚な人間ドラマですが、ちょっと「ロスノフスキ家の娘」っぽいかも?2022/05/23