内容説明
毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦―「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明ける妻―「病気の通訳」。夫婦、家族など親しい関係の中に存在する亀裂を、みずみずしい感性と端麗な文章で表す9編。ピュリツァー賞など著名な文学賞を総なめにした、インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。
著者等紹介
ラヒリ,ジュンパ[ラヒリ,ジュンパ][Lahiri,Jumpa]
1967年ロンドン生れ。両親ともカルカッタ出身のベンガル人。幼少時に渡米し、アメリカのロードアイランド州で成長する。’99年、「病気の通訳」がO・ヘンリー賞受賞。同作収録の短編集『停電の夜に』でPEN/ヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞ほかを独占し、鮮列なデビューを飾る。2000年4月には、新人作家としてはきわめて異例ながらピュリツァー賞を受賞し、一躍全米の注目を集めた
小川高義[オガワタカヨシ]
1956年横浜生れ。東大大学院修士課程修了。横浜市立大学助教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
476
表題作を含め9つの短篇を収録。原著のアメリカ版では「病気の通訳」が作品集のタイトルに採られていたようだが、邦訳版では「停電—」の方を採った。日本での売れ行きを考えれば妥当な選択だったと思う。9篇のいずれもそれぞれに味わい深いが、例えば上記の2作が持つ些細な心のすれ違いの中に人生を浮かび上がらせるといった手法は、これまでのどの作家のそれとも違っているようだ。また、作品集全体に貫流する異文化感も得難い味わいである。とりわけ巻末に置かれた「三度目で最後の大陸」は、読者をせつない郷愁のような感情に巻き込んでいく。2017/09/06
Major
292
翻訳もすぐれているのだろう。無駄な装飾のない簡潔な短文でテンポよく展開されていく。言わずとも知れた短編の名手O・ヘンリーのように、殊更にペーソス、ヒューモアあるいは温かみがシーズニングされているわけではない。また、もう一人の短編の名手サキのように奇異で冷笑的な作品でもない。しかし、ラヒリのこの短編集は彼らの作品群と比べても何の遜色もない。一口に言って「少し苦い作品」なのである。それでいて読後に何かしら心地よい風を感じさてくれる短編集である。3つのコメントに続く2026/08/06
宵待草
265
乙川優三郎の『ロゴスの市』を読んだ折に、此のジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』が、文中に紹介されて居て読みたいと思い手に取りました。 愛称ジュンパに依り知られるジュンパ・ラヒリは、『ピュリツァー賞』『O.ヘンリー賞』『PEN/ヘミングウェイ賞』などの受賞歴を持つ、インド系アメリカ人の小説家です。 そして、とても美しい女性!、、、熟と(天は二物を与えたなぁ~)と思うのです。 私が最近とても心惹かれ、著書を既読して来た乙川優三郎が、ジュンパ・ラヒリの人生の機敏に触れる筆致を好むのは頷ける様な、、、コメントへ続く2022/05/24
のっち♬
258
「停電の夜は特別な夜になった」9編の多くがインド系アメリカ人に焦点が置かれており、生まれ育った土地とアメリカの文化的価値観の相違と対峙する移民の生のジレンマ、家族内の亀裂や軋轢などを平易な言葉遣いと繊細な語り口で綴っている。とりわけ結婚生活や不倫など男女のすれ違いを扱うことが多く、登場人物たちの日々の葛藤、奮闘、不安、そして偏見などを時間の経過とともに緻密な観察力で丹念に追っており、劇的な展開がないのに視点移動も巧みさもあって引き込まれる。「どれだけ普通に見えようと、私自身の想像を絶すると思うことがある」2020/04/23
はっせー
251
海外文学の短編集の中で今まで読んだことないような読後感である!9つの短編がこの本に入っている。この9つの短編の共通点はありそうな日常である。だがありそうな日常をただ書いただけならここまですごくはならない。緩急のある表現や奥行きのある世界観この2つが秀逸である。私個人のおすすめは『停電のよるに』『三度目で最後の大陸』である。停電の時間にお互いの秘密を言い合う夫婦。6週間だけ住んだアパートの話。おちがないがそれが心地よい。久しぶりに名著に出会えて本当に良かったと思える作品であった。 また読みたいと思った!2020/09/13




