感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
53
自身が「皮膚と記憶に焼き付け」たものと、227人からの資料による「鎮魂の碑」。本巻は逮捕から審理、結審まで。語られるのは、誰もが「出来の悪い芝居」だと承知している審理や裁判などについて。その中で、非人間的な審理を経て、監房で同じ境遇の人々との「心の間に通いあう何か生き生きと動くもの」を語る部分や、人間の深淵を覗くように権力に酔う秘密警察と自身との違いは「人生の成行きにすぎなかったのではないか」と洞察する部分は本巻の圧巻で、作者の描く不条理の中で生きる人の弱さと強さが織り成す悲喜劇を味わえました。次巻へ。2025/10/07
燃えつきた棒
44
今頃、この本を手に取ろうという人は、あまりいないかも知れない。 だが、東日本入国管理センター等の入国者収容所における外国人に対する極めて非人道的な処遇を目にするにつけ、この文学的ルポルタージュが北朝鮮や中国においてのみならず、現代日本においても、今もなおアクチュアルなものであるとの思いに駆られ、手に取った。 2021/07/11
ポテンヒット
9
立花隆さんの「シベリア鎮魂歌」で紹介されていた本。逮捕から審理(と言っても一方的な訊問と数々の拷問)、判決に至るまでディストピア小説のような展開。著者は言う。悪徳を糾弾せず体内に追い込む事で私達はその種子を蒔いている。それはやがて何千倍にもなって芽を出す。あの連中を咎め立てさえしない事で新しい世代から正義に対するあらゆる基盤を失っているのだ。そのために若い世代は無関心に育ち、卑劣な行為が却って富をもたらしている事を学びとっていると。著者が今の状況を見たら何と言うだろう。2022/03/29
1goldenbatman
6
「では、私たちはどうすればいいのか?・・・・・いつの日か私たちの子孫は、私たちの何世代かを骨抜きの世代と名づけるだろう。・・・・・」スターリンとその取り巻きが行った恐ろしい行為に抗うこともなく、いつまでも従い続けたのはどうしてだろう?その答えは?2018/04/01
ホレイシア
4
「ガン病棟」ほどはまらなかったが、それほど苦労せず読み通した記憶はある。2008/01/04