感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
59
本巻でも、何のためにどんな風に生きるのか惑う登場人物たちの歩みに絡めてソ連の理想と現実、問題が炙り出されます。同時に、この世の終りのような足の切断手術が痛みのあまり救いのように思われるといった個人の価値観の変化と、スターリンの死後3年が経ち政治犯の名誉回復など雪どけへ向ってゆく1955年の世相とが重ね合わされて、価値や思想を含め不変のものなどないことが示唆されます。作者はその寄る辺ない世界の中を「自分の運命をかかえて生きて」いく人々を皮肉にしかし愛を込めて描いていて、その目にいつも惹かずにはいられません。2023/01/20
みゃーこ
52
ロシア文学の面白さは抑圧された当時の社会的背景にあるのかもしれない。人間存在の本質をより鮮明に浮き彫りにする。解説を読んで、ソルジェニーツィンの生涯を翻弄させた価値観、発禁処分、国外追放など様々な受難の歴史を知り、言論の自由が許されない中命がけで表現活動をしてきた当時の文豪たちの迫力が胸に迫ってくる。本作でも国内で厳しい批判にさらされついに西欧での発表という事態。拒絶され続けてもなお優れた彼の作品は今なお読まれ続けているのである。2013/01/25
tama
7
自本 1970年学生生協で 小笠原豊樹さんの訳文が佳いです。話がスタートして数か月、世間では少しづつ「名誉回復・釈放」が始まる。オレークが退院。迫害ではなく普通に。鉄道の切符を買うが「チェ駅」がどこにあるのやら私らにはわからず、どこへ向かうことにしたのか分からないのがストーリー理解上辛い。オレークの未来への眼差しは明るくなく、こっちもひたすらやるせない気分が続く。やった方はそんなにひどいことをしたつもりはないと言い、隠れ、やられた方は一生の傷を受け知らぬふりをされ続ける。動物園の猿の話はこれだったのか。2015/11/20
ホレイシア
7
何がツボにはまったんだか、自分でもよくわからないが、とにかく好き。2008/01/04
1goldenbatman
6
ヴェガとゾーヤ、二人の女に揺れ動くコストグロートフ。 「・・・・・それと比べれば、いったいどういうことなのでしょう。自分が生まれた時以来ずっと暮らしている平和な家に、外套を着て軍隊帽をかぶった人たちがだしぬけにどやどや入って来て、二十四時間以内に、かぼそい腕で持てるだけの物を持って、その家から、その町から立ち去れと命令するのです・・・・・」幾多の苦難を乗り越えて生き延びた人々は、思いがけないような雪溶けに胸を撫で下ろしたが、苦難のうちに命を落とした人々は痛ましい。2020/04/03
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