感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
68
舞台は1955年のソ連邦。物語は、職場で指導的立場にあるルサノフが癌病棟に入院するところから始まります。彼が自分の社会から引き剝がされ、一介の患者となって病院の秩序へ組み込まれてゆく冒頭から引き込まれずにはいられません。その、医者や職員を含め様々な階級や経歴の人々が集まる病棟はソ連社会の、ひいては普遍的な人間社会の縮図ともなっていて、彼らの人生観や情熱、日々目にする死への恐れやあがきといったものを絡み合せ、やがて悲しき人間喜劇を描き出す作者の筆は鮮やかで溜息が出るよう。輾転する登場人物達を追って第二部へ。2023/01/17
みゃーこ
52
第13病棟のガン病棟には収容される患者たち。死の淵にあっては誰もが等しく平等であり人間存在の本質に直面する普遍的問題に向き合う仲間である。1955年当時のソビエト社会の抱える様々な問題が底知れず独特の影を浮かび上がらせている。そして人物や状況の丹念な描写が読む者を引き込む。2013/01/25
tama
9
自本 70年に学生生協で購入 初ソルジェニーツィン。今度で4回目くらいの再読。60年代のソ連で書かれソ連国内では出版できず海外で発表したものが日本でも評判になったもの。確か書評に魅かれて。決してクソリアリズムで書かれてはいないが病室独特の悪臭を思い出す文章。善玉も悪玉も勝ち組もいないのがこの時代のガン病棟。一応オレークという収容所出の永久追放された男が主人公的立場だが、他の患者もほぼ同等な扱いで話は進む。なにより物語がどこへ向かおうとしているのか全く分からずひたすら治療と病状が書かれるのは辛抱が必要。2015/11/20
ホレイシア
7
これはお気に入り、ボロボロになって手元にあります。2008/01/04
1goldenbatman
6
「癌病棟はすなわち第十三病棟だった」俗物ルサノフや永久追放者コストグロートフなど数人が暮らす病院の相部屋で繰り広げられる人間模様。「カドミン夫妻のように生きること、事物の現在あるがままの姿を喜ぶこと!僅かなもので満足する人こそ賢人である。」2020/03/31