出版社内容情報
世界文学史上に残る名作短篇「雨」収録。太平洋に浮かぶ島で、止まない雨が招いた不可解な出来事――。
狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」のほか、浪漫的なムードとシニックな結末で読者を魅了する恋愛小説「赤毛」など、南海を舞台にした短篇3編を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅう
119
狂信的な思想を持つ宣教師が、乗り合わせた船の乗客である娼婦を教化しようとする『雨』。これを読んで、『異邦人』の「太陽のせい」というのを思い出した。宣教師が理性をなくしたのも、まるで「雨のせい」と言わんばかりだった。人間の弱さが巧みに描かれていて物悲しい。若い水兵さんと島の娘との純愛を描く『赤毛』では、あっというオチが用意されていた。そのシニカルなラストに魅了される。他『ホノルル』を収録。2026/01/08
アキ
116
短編小説史上最高とも言われる「雨」。雨季のサモアで降る雨は、原始的な自然の力だけでなく、人間の欲望をも呼び覚ます。医師兼宣教師が悔い改める娼婦と一晩を祈りと共に過ごすうちに、過ちを犯し自死を選ぶ。娼婦が男なんて皆んな一緒よと叫ぶ結末は、どうしようもない男という悲しき性を示す。ただ、この話の語り手は同僚の医師であり、信頼できない語り手の可能性も否定できない。「赤毛」のラストにも愛する男女の数十年後という鮮やかな落ちがある。他に「ホノルル」もラストの返しが秀逸。いずれも1921年「木の葉のそよぎ」短篇集から。2022/10/01
NAO
94
再読。モームの南洋もの三篇。『雨』狂信的な宣教師の特権を振りかざした独善的・高圧的な態度と、人々の神経に触る、激しく、しつこい雨の描写が見事に呼応し合い、宣教師の破滅へと突き進んでいく。『赤毛』の、あまりにもロマンチックな話と最後の落差といい、『ホノルル』の最後といい、イギリスの諜報部員だったというモームは、人間の感情に対して全く信用をおいていなかったのだろうか、と思う。2019/06/06
Kajitt22
82
南の島が舞台の短編。『月と六ペンス』の熟れた熱気の中の緑濃いモーレア島の描写を思い出した。あのストリックランドの狂気とも思えるシリアスな生き様に胸を打たれたが、これらモームの短編にはアイロニーとユーモアの色合いが濃い様に思う。しかし、それこそが人間モームそのものかも知れない。物語の語り口には、思わず引き込まれてしまう三つの短編でした。2021/05/18
やきいも
81
恋愛ものの短編の『赤毛』が深く心に残った。読みはじめは少し退屈なんだけど、ロマンティックな中盤からほろ苦い結末までストーリーもとても印象深い。本文の中にも心ひかれる一行がいくつかあった。有名な短編『雨』もなかなか良かった。これから何回も読み返すであろう短編集。2015/08/07




