内容説明
1918年夏、焼け爛れた戦場には砲弾、毒ガス、戦車、疾病がたけり狂い、苦熱にうめく兵士が全戦場を埋め尽す中にあって、冷然たる軍司令部の報告はただ「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」。自己の体験をもとに第一次大戦における一兵士ボイメルとその戦友たちの愛と死を描いた本書は、人類がはじめて直面した大量殺戮の前で戦慄する様を、リアルに文学にとどめたものとして、世界的反響を呼び起こした。
著者等紹介
レマルク[レマルク][Remarque,Erich Maria]
1898‐1970。ドイツ生まれ。1916年、第一次世界大戦に出征し、戦後は小学校教員やジャーナリストなどの職に就きながら、小説を執筆する。’29年、『西部戦線異状なし』を発表し、一躍世界的な人気作家となる。’32年、反戦作家としてナチスの迫害を受け、スイスに移る。翌年国籍を剥奪され、著書は焚書の処分を受ける。’39年アメリカに移住
秦豊吉[ハタトヨキチ]
1892‐1956。東京生まれ。ゲーテ『ファウスト』などの翻訳のほか、丸木砂土の筆名で随筆、小説、読物を多く発表した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
397
戦場文学。第一次大戦のフランス戦線に投入されたパウルをはじめとした兵士たち。彼らの頭上を砲弾や銃弾が飛び交い、果ては毒ガスにまで苦しめられる。戦死や負傷は、それこそ日常化していた。最初の夏から秋までの間に、彼らの属していた第2中隊150人は、わずかに32人しか残らなかった。彼ら兵士たちは戦場の最前線にいて、目と耳とを頼りに戦い続けるしかない。戦線全体の戦況や、まして戦争の趨勢は全く分からない。ただただ眼前の弾を躱し、塹壕に飛び込むだけだ。最期の日も穏やかで「西部戦線異状なし。報告すべき件なし」であった。2016/07/15
ケイ
135
作者が18歳の時に第一次大戦の対仏戦線にて経験したことが、これを書かせた。まだ子供である学生が、大人の非情な戦争に巻き込まれ、死に対面する。肉弾戦による大量のあっけない死、仲間たちが一人ずつ減っていく戦場。目の前で刺し殺してしまったフランス人へ感じた動揺。まだ何物でもない若者は、戦場を生き延びたとしても、いったい何をよりどころに生きていくのか。容赦ない戦場での記述の中に混じる、若者らしい笑いと友情、残酷さ、食欲、異性への興味などが、余計に彼らの奪われた生活を際立たせる。タイトルがすべてを示すすごさに感服。2015/10/24
まふ
134
第一次大戦のドイツ軍側から描かれた徴兵兵士の最前線の記録である。主人公パウルは中学校の7人の同級生と共に徴兵されて同じ部隊に配属され、フランス軍との塹壕戦に従事させられる。個性豊かな同級生との仲間意識のやり取りやいたずら、初めての性体験などが楽しく描かれる。が、休暇で帰郷するも、病気の母や自分の心境の変化などでなじめない。それからは激化する戦闘で次々に友人を失い、凄まじい戦闘や被弾・負傷場面が描かれ、最後に本人も戦死するが「戦線は異状がない」のである。戦争の空しさが浮き彫りになった名作。G1000 。2023/04/24
ehirano1
119
異常ありまくりの西部戦線。非日常という日常の描写は読者を余裕で殺戮の前線に連れて行ってくれます。2024/12/26
やいっち
113
一言、傑作。本作品について感想など無い。ただ、傑作とだけ繰り返しておく。2023/02/20