新潮文庫<br> やけたトタン屋根の猫

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新潮文庫
やけたトタン屋根の猫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 297p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102109083
  • NDC分類 932
  • Cコード C0197

内容説明

舞台はアメリカ南部の大富豪の家。一家の主は、癌で余命いくばくもない。この家の次男ブリックの妻マギーは、同性愛の愛人を失ってから酒びたりの生活を送る夫の愛を取り戻そうと必死だった。また、長男グーパー夫婦は、父の病状を知って、遺産相続を有利に運ぼうとしていた。―父の誕生日に集まった二組の夫婦、母親らの赤裸な性と愛と欲を描くウィリアムズの傑作戯曲。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

65
再読。癌である父の誕生日にやって来た長男夫婦と、次男の妻が繰り広げる遺産相続争いの熱いバトル。生への執着、満たされない性への欲求、言葉としては現れてこない死への恐怖。閉鎖的な南部社会。その中で自分の本性を隠し続けなければならない苦しみと欺瞞。三幕は、オリジナルと上演台本の二種類が掲載されている。安心して読めるのは上演台本だが、閉塞感に押しつぶされそうなオリジナルの方が、テネシー・ウィリアムズらしいと思う。2018/10/07

ヴェネツィア

61
全3幕から成る劇だが、2つの異なった第3幕が残されている。本書にはそのオリジナル版と、演出家エリア・カザン(映画『エデンの東』などで名高い)の提言を入れたニューヨーク初演版の両方が収録されている。舞台で見るとまた違った印象を受けるかもしれないが、戯曲で読む限りではオリジナル版のマーガレット、ブリックの方が、より彼らの人間性の本質を深く表現していると思う。また、作品全体の底流に流れるミシシッピデルタの風土感は、その茫漠たる広大さと共に、倦怠と行き詰まりの感覚を内包しながら、舞台の全幕を覆っているかのようだ。2013/05/26

みっぴー

44
私が読んだものは旧版らしく、タイトルは『やけたトタン屋根の上の猫』で、訳者も違うみたいです。大富豪の父を持つグーパーとブリック、そして彼らの嫁が、財産を狙って義父に取り入ろうとする話です。主役は次男ブリックの嫁、マギーでしょうか。やけたトタン屋根の上で繰り広げる熱いバトル、そう、全ては生きるため。結婚して、子供を何人産んでもそこがゴールではない。もう、人生とは一体何なんだ。トタン際の攻防に終わりはない。私は尻尾まいて逃げます!2018/03/25

syota

29
3幕の戯曲。『欲望という名の電車』の主役ブランチの底知れぬ絶望には心打たれたけれど、本作でのブリックの絶望も劣らず深い。現実を正視しきれず押しつぶされたブランチは狂気に逃れ、こちらのブリックは酒に溺れた。ゲイが市民権を得た現代では考えられないが、この時代、それも保守的な南部の白人社会では、他人ばかりか自分をも偽らなければ暮らしていけなかったのだろう。妻のマギーや「おじいちゃん」の人物造形も見事で、陰鬱な話なのにどんどん引き込まれ、一気に読了してしまった。さすがウィリアムズ。1955年ピュリッツァー賞受賞。2018/08/22

高橋 橘苑

17
心身の病も平癒したので、ひっそりと読メを再開します。さて、テネシーウィリアムズもこれで4作目となるが、袋小路に入ってしまう絶望感は相変わらずで、心に澱が沈んでゆく読後感に、ただ酔いしれるしかない。無論この劇は、同性愛の問題等を含んでいるとはいえ、何かもっと根源的なるものを語り合いたいと願う人達の、叫び声の様でもある。人生の皮相な面にのみ話題を限定して、満足した気分にさせてくれない状況は重苦しい。しかし、第2幕のブリックとおじいちゃんの様に、伝わらない言葉のもどかしさから、逃げる事が出来ない時もあるだろう。2018/11/12

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