出版社内容情報
マリアとの愛とゲリラ隊の面々への理解を深めていくジョーダンは、華やかで享楽的なマドリードにマリアを伴う未来を夢想する。だが、仲間のゲリラ隊がファシスト側との凄絶な闘いを経て全滅し、戦況は悪化。ジョーダンは果たして橋梁爆破の任務を遂行することができるのか──。スペインを愛し、その過酷な現実を直視したヘミングウェイが書き上げた、戦争の意味と人間の本質を問う渾身の傑作。
アーネスト・ヘミングウェイ[アーネスト ヘミングウェイ]
著・文・その他
高見 浩[タカミ ヒロシ]
翻訳
内容説明
マリアとの愛とゲリラ隊の面々への理解を深めていくジョーダンは、華やかで享楽的なマドリードにマリアを伴う未来を夢想する。だが、仲間のゲリラ隊がファシスト側との凄絶な闘いを経て全滅し、戦況は悪化。ジョーダンは果たして橋梁爆破の任務を遂行することができるのか―。スペインを愛し、その過酷な現実を直視したヘミングウェイが書き上げた、戦争の意味と人間の本質を問う渾身の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えりか
51
やるせなさや哀しみに似た静けさが心を覆う。戦争の末端も末端の中で戦う者たちの苦しみや葛藤を描くことで、戦争の愚かさや不条理さ、残酷さを表し、また人が人を殺めることに正統性はあるのかということを問いている。罪を感じながらも、これは大きな勝利のための、自分の信じることのための殺人であると思うことで、心を慰めようとするアンセルモの姿は悲痛だ。教科書では◯と×が戦い◯が勝利としか書かれていないが、その中で多くの個の犠牲があるということを忘れてはならない。2018/05/27
yumiha
43
ん⁉表紙の写真、キャパだ。(上)の表紙もキャパだったのねん(遅っ!)下巻では、緊張感の漂う場面が、次々と展開される。先を急ぎたい気持ちになったり、ゆっくり味わいたい気持ちになったり。生きて帰れないかもしれない思いに捉われ、さまざまに考えるジョーダンにも、目が離せない。「猫くらい自由奔放な動物はいない」という箇所では、『世界ネコ歩き』で見たヘミングウェイのキーウェストの家の猫たちを思い出した。共和党であれファシスト側であれ堕落した上層指導部と、そのコマとして消費される農民や労働者たちという構図は、同じだ。2019/01/10
特盛
39
評価4.2/5。どえらい読み応えのある小説だった。スペイン内戦に参戦するアメリカ人ジョーダンの4日間。大規模作戦の一つとして橋を現地ゲリラと爆破するミッションだ。人は戦争に向き合って死をどうとらえるのか。ここにあるのは葉隠の様な、もう既に先に死んでいる世界観だ。マリアという美しい恋人との限られた時間の輝き。死を乗り越えたはずのジョーダンが、この世界を実に惜しいと慈しむ。この感情の切なさといたら。我々は、彼らが望み、生きられなかった平和な人生というものを漫然と送っている。このギャップに読後出たのはため息だ。2025/03/12
おにく
37
思いがけない結末に虚脱感を覚え、生き残った者たちに罵声を浴びせつつ、ボタンをかけ違った根本の原因は何だったのかと、ひと通りもだえ苦しんだ後でようやく、「ヘミングウェイが実際に現場で見聞きした体験をもとに、内戦の持つ悲惨さや嫌らしさまでも、見事に表現された小説。」という境地にたどり着きました。実際にこうしたゲリラは、規律や結束も薄く、他の部隊の敗走をかえってほくそ笑んだそうで、内戦末期には、多くの同胞が命を奪われ、国外逃亡を余儀なくされたそうです。 2021/04/02
コージー
25
★★★★★1930年代のスペイン内戦が舞台。義勇兵のアメリカ人ジョーダンが、現地ゲリラ隊と協力し橋の爆破を決行する。その3日間でマリアという女性と恋をし刹那的な幸福を享受しながらも、いざ命を賭して敵と対峙する。登場人物が非常にユニークで、読者を引き込む大きな要素となっている。また、戦争という過酷な状況がリアルに描写されており、ひしひしとその緊張感が伝わってくる。人間としての弱さや欲望と葛藤しながら、正義という建前のもとに使命を全うしようとする彼らの姿は、非常に頼もしくあり、美しくもあり、悲しくもあった。2023/07/14
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- 和書
- 千里眼の教室 角川文庫