内容説明
ドイツ民族の中を流れる最も民族的なものに愛着を感じ、そこに民族の魂の発露を見たグリム兄弟がとらえたメルヘンの世界。本書には表題作のほか、『水の妖精』『悪魔とその祖母』『名親としての死神』『幸福のハンス』『三人の糸紡ぎ女』『狼と七匹の子やぎ』『赤ずきん』『いばら姫』『狐と鵞鳥』など38編を収録。人の心を美しく気高くするグリム童話の真髄を伝える小品集である。
著者等紹介
植田敏郎[ウエダトシロウ]
1908~1992。広島生れ。東京帝大独文科卒。’31年渡欧、ウィーン大学等で学ぶ。専門はゲーテ時代のドイツ文学で、学習院大、一橋大教授等を歴任。一方日独の児童文学の架け橋となる著作翻訳を行った。翻訳文化賞等受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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朗読者
22
ヨルシカさんの「ブレーメン」から。10ページ弱の童話を35篇収録したグリム童話集。カッセルのグリム兄弟博物館とブレーメン市庁舎横の音楽隊像、それから日本人学校でお世話になった先生がブレーメン音楽大学卒で意外にもギター専攻だったことを思い出しました。子供にこれを読ませるか、と日本人には残虐に感じる話もたくさんあり、歴史的に戦争や拷問が身近な欧州人には抵抗ないって話も思い出して、こうした童話がロシアの残忍さにも少し関係しているかもなと悲しく思いました。2023/06/26
大粒まろん
9
有名なこのお話、実はあまり知られていない現実があります。グリム兄弟の時代、音楽家たちは公務員で、生涯賃金を約束されていました。つまり4頭の動物たちは、望みもしない年金など要らないと、蹴ったようです。寓話や童話の中には、必ず隠された教訓や、背景があったりします。違っても良いから、それらを考えてみるのも、また、楽しいものですね。2023/04/10
もぐを
3
完全にジャケ買い。藤代清治さんが大好きで。童話を読むのはまさに小学生のころ以来だと思います。2018/11/08
こっけ
2
ヨルシカコラボカバーより。グリム童話が本当は残酷であることは知っていた…というか、狼の腹をかっさばき石を入れることを真に受けるとどう考えても狂気の沙汰であるのは当然であって、けれども読みやすい文章の中に繰り返される掛け合い、その中での善悪が語られている様は読み応えがありました。ある主の世界の縮図のよう。2025/01/30
熊吉
2
昔絵本で見たお話の文章に再び触れられて、少し懐かしい気持ちになった。『猫と鼠の一緒の暮らし』の最後の一文で笑った。コントの原型のような『かしこいハンス』も好きだし、『いばら姫』の切なさと綺麗さがある感じも好き。2023/08/19