出版社内容情報
トルストイ[トルストイ]
著・文・その他
内容説明
社交界も、家庭も、愛しい息子も、みずからの心の平安さえもなげうって、ヴロンスキーのもとへ走ったアンナ。しかし、嫉妬と罪の意識とに耐えられず、矜り高いアンナはついに過激な行動に打って出るが…。ひとりの女性の誠実、率直な愛が破局に向ってゆく過程をたどり、新しい宗教意識による新社会建設の理想を展開して、『戦争と平和』と両翼をなす、文豪トルストイ不滅の名作。
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- 評価
Tsuno本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
123
全て投げ打つまでの恋。それは何と熱い想いなのでしょう。アンナは何もかも捨ててヴロンスキーのもとに走るものの、嫉妬と罪と被害妄想に耐えられず、過激になっていくのが哀れに見えました。愛が率直しすぎるが故に破局へと陥るというまさに報われない結末を迎えるのに、それまでの情熱から一気に虚無感を感じずにはいられませんでした。それに反するようにキチイとリョーヴィンの幸福を描くことで対照的な恋の効果を描くことに成功していると思います。身を滅ぼすアンナに対し、幸せな歩みへと踏み出すリョーヴィンの最後が印象的です。2017/02/13
ハイク
114
全巻を通じて主役は勿論アンナカレーニナで、描いている姿は多くの読者の憧れであろう。一方リョーヴィンの描写は結構多い。これまでの経緯から著者の彼への熱の入れ方は普通ではない。最後の訳者の解説によるとリョーヴィンはトルストイの分身であるような書き方をしているという。また最初の原稿ではアンナのみでリョーヴィン等は後で登場させたという。全体を通じて感じたのは対比の文学であるということだ。都会と田舎、貴族と農民、幸福と不幸、結婚と不倫、生と死等を際立たせて農民たちに光を与えていると強く感じたのは私だけであろうか。 2017/10/08
ナマアタタカイカタタタキキ
85
大規模な遁走曲の中、幾度となく嬉遊部を挟んではいるものの、やはりそこにはあくまでアンナが主唱として存在する。そして対旋律的なポジションに在るリョーヴィン。彼が彼女と対峙した際瞬く間に魅了された辺りからも、アンナは不義を働いたために蔑まれる立場にあったとはいえ、頗る魅力的だった女性だったことが窺える。官能性と聖性の両方を併せ持つ、人々が幅広いイメージを投影できるような存在だったのだろう。しかし彼女は、意を決して無償の愛を為そうとするも、生身の人間であるためにそこには至らず、ついには錯乱状態に陥り(その→2021/10/27
nakanaka
71
凄い作品でした。夫と息子を捨て、不倫相手との都会生活を取ったアンナ。かたや、田舎での田園生活ではあるものの平穏で幸せなリョーヴィンとキチイ。この対比が残酷でもあり面白くもありました。私個人としては不器用ながらも健気に真っすぐ生きるリョーヴィンに共感と尊敬の念を禁じ得ませんでした。特に印象深かったのは、キチイの出産の場面とリョーヴィンが信仰に目覚め始める場面。アンナが精神的に参ってしまっているあたりは痛々しく可哀想でしたが彼女にもだいぶ非はありそう。凄い作家であることに今更気付いたので他の作品も読みます。2024/10/08
NAO
68
アンナは、爛熟した頽廃的なロシアの大都会における偽りだらけの貴族社会の犠牲者として描かれている。だからこそ、アンナは、そのしがらみに押し潰されて死ぬしかなかったのだろう。だが、そうはいっても、やっぱりアンナを良くは思えないのは、彼女の行為が罪でしかないからだ。都会の偽りの夫婦生活から離れたリョーヴィン夫婦は、トルストイの理想の生活像だが、田舎での実質的な生活にも問題がないわけではない。どこで暮らすにしても問題だらけだったロシアの実情こそが、トルストイが描きたかった真実なのだろう。2016/12/05
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