内容説明
モスクワ駅へ母を迎えに行った青年士官ヴロンスキーは、母と同じ車室に乗り合わせていたアンナ・カレーニナの美貌に心を奪われる。アンナも又、俗物官僚の典型である夫カレーニンとの愛のない日々の倦怠から、ヴロンスキーの若々しい情熱に強く惹かれ、二人は激しい恋におちてゆく。文豪トルストイが、そのモラル、宗教、哲学のすべてを注ぎ込んで完成した不朽の名作の第一部。
著者等紹介
トルストイ[トルストイ][Толстой,Лев Н.]
1828‐1910。19世紀ロシア文学を代表する巨匠。ヤースナヤ・ポリャーナに地主貴族の四男として育つ。ルソーを耽読し大学を中退後、暫く放蕩するが、従軍を機に処女作『幼年時代』等を発表、賞賛を受ける。帰還後、領地の農民の教育事業に情熱を注ぎ、1862年の幸福な結婚を機に『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』を次々に完成。後、転機を迎え、「神と人類に奉仕する」求道者を標榜し、私有財産を否定、夫人との不和に陥る。1899年『復活』を完成。1910年、家出の10日後、鉄道の駅長官舎で波瀾の生涯を閉じた
木村浩[キムラヒロシ]
1925‐1992。東京生れ。東京外国語大学ロシア語科卒。出版社勤務の後大学で教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
460
いかにも長編小説といった悠々たる構想。タイトルロールのアンナの登場なども満を持してといった構えである。プロットの基軸をなすのはアンナの恋なのだろうが、物語の構造はけっして単純ではない。世紀末ロシアの貴族社会を舞台に様々な登場人物たちが絡み合いながらそれぞれの物語を織りなしてゆく。不倫の恋に突き進むアンナ、虚偽と虚言の宮廷社会を渡ってゆくカレーニン、家柄にも容姿にも恵まれたヴロンスキー、恋に破れ領地の経営に目覚めたリョーヴィン、失意のキティ、俗物代表のようなオブロンスキー。期待を持って、一気に中巻へ。2022/11/15
ハイク
118
「戦争と平和」に続けてトルストイは2作目である。どうして評価の高いのであろうかと思いながら読んだ。まだ半分に満たない所なのでよく分からないが、上巻において言えることは丁寧な描写である。風景描写や人物描写そしてなりよりも、心理描写が驚くばかりの丁寧さである。読み手にとって頭に浮かべやすい表現で、物語の中へ引き込んでいく。著者自身の貴族としての経験が大きくこの本に反映しているのであろう。主題はアンナの不倫のようだけど決してそれだけではないような気がする。これからどのように展開していくのか楽しみである。 2017/09/22
優希
117
面白かったです。不倫ものではありますが、その内面に渦巻くドラマは宗教と哲学とモラルに切り込んでいて引き込まれます。不倫は罪かもしれませんが、恋に溺れてしまえばその意識は何処かに行き、2人の間は燃え上がるもの。ヴロンスキーが心奪われたアンナ。そしてアンナも彼の情熱に惹かれ、やがて激しい恋に落ちていくのに艶かしさすら感じます。2人の恋はどういう行方になっていくのか気になりますね。続きも読みます。2017/02/13
ナマアタタカイカタタタキキ
105
不倫小説として名高い。まだ上巻だけれど、ここまででも単なる愛憎劇では収まりきらなさそうなスケールを感じる。同じロシア文学でも、ドストエフスキーのようなダイナミックさよりは、もっと俯瞰的、かつ思索的な印象が強い。前者の場合はより一人称的な視点からの描写が多かったのに対し、後者は読者しか知り得ない事柄についても描かれているのも一因のようだ。人間の極めて微細な心情の移ろいを、理知的な文体でもって鋭く捉えている。筋書きに関してもなかなか先が読めないところがあり、興味深い。ひとまず中巻へ…って、中巻やたらと分厚いw2021/10/11
よむよし
101
「幸せな家族はいずれも似通っている。だが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある」との冒頭の一節の通り、それぞれ問題を抱えた多くの家庭が描かれます。反面、主人公がなかなか登場しない不思議な作品です。またセリフも少なくどこかミステリアスな人です。「仕事をする機械なのよ」と妻から言われる夫も、不倫相手の若き将校も結局アンナを受け止められなかった。それは親戚縁者、社交界も同様だった。彼女はどんどん孤立してしまい居場所がなくなっていく。それにつれて精神的に不安定になっていき悲惨な結末を迎えてしまう⇒ 2023/11/03