内容説明
海辺の小さな町イーストウィックに住む３人の魅力的な現代の魔女たち。魔女といっても、いずれも３０代の女ざかりで、離婚して子供を抱え、彫刻家、チェロ奏者、新聞記者と自立した生活を送っている。時には小さな魔法で恋のとりもちをしたり、意地悪をしてみたり。そんな３人の前に、いわくありげな中年の独身男が現れて…。女性の優しさと恐ろしさを映しだす大人のための現代の寓話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
306
”Sex and the City”の時代を30年ばかり遡らせ、舞台を喧噪のニューヨークから静かなロードアイランド州に移し、通俗的なところを半分くらい（あるいは７０％）に薄め、その代わりに教養のスパイスをふりかけると本書になる。主人公の３人は、ほとんどが普通の女性なのだが、それぞれに少しだけは魔女（比喩的な意味ではなくて）なのだ。本書は'60年代後半の時代状況を濃密に反映しているし、それは同時に女性解放の時代でもあったことを如実に伝えてもいる。アップダイクの世界観がどこまでも楽天的に見えるのは不思議だが。2016/02/21
ケイ
119
魔女たち？魔女のような女たち。離婚歴のある仕事を持つ三人の女性。性的なパートナーや相手を気軽に選んでいるようで、どこか悲しさがある。自分相手に浮気をしている男の妻との関係の修復は魔女の仕事かしら。それはきっと辻褄合わせ。悪い男にみんなで騙されるのも、まだ夢を見ているから。本当の愛を見つけて、真に自立した女におなりなさいよ、とアップダイクが彼女たちに発破をかける。イーストウィックの街を上から覗き込んで、グッドラックと微笑みながらエールをおくっている…、ように私は思う。2015/11/19
まふ
116
仲良しのバツイチ組の3美女が空き豪邸の新たな買主であるリッチでハンサムなダリルに対し共同であるいは個別に近づき妻の座を得ようと活動するが、別の若い美女に妻の座を取られたため魔女的な呪いをかけると美妻は死んでしまう。ダリルは実は食わせ者で妻の弟を連れてトンズラしてしまう。バツイチ組はようやく目が覚めて普通の生活に戻る、という魔女物語としては今一つパンチが効かなかった。音楽教師のジェインとダリルのチェロソナタをはじめとする説明の中で著者の音楽的素養は確かに確認できました。G1000。2023/08/13
NAO
77
海辺の町で、自分自身の生き方を謳歌している三人の中年女性。だが、彼女たちの平和な日常は、突然現れた、ちょっと芸術家風、都会風の独身男にかき乱されていく。彼女たちが手にしていた（手にしていると思い込んでいた）自由とは、いったい何ものだったのか。当時の時代背景を如実に映し出して自立した女性たちを描いているようでありながらも、この作品の底に潜む作者の悪意が、私にはどうしても好きになれなかった。 2019/02/28
sin
76
この物語は文学臭がプンプンする比喩に満ちた表現で組み立てられた悪意を楽しむ箱庭だ。その舞台に巣くう三人の魔女、好物は男、そして新参者に翻弄されて逆恨みの魔術に手を染める。魔術はその匿名性から現代のSNSに似ている。かけた本人にも予測の付かない拡がりを持つこともある。そして物語はそれら犠牲者を顧みることもなく、味気なく平凡な人生を暗示して幕を引く…◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう！http://bookmeter.com/c/3348782018/06/26
