感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
23
大体最初の一行で、主人公の名前・職業・年齢がわかる短編集。靴職人、作家志望、元卵鑑定人、高校中退、挫折した研究者、小売店の店主、学生等々、世知辛い世を渡る冴えない人々。人生はままならぬもの、どころではない、もしあなたがユダヤ人だったなら。まず何をやってもうまくいかないし、仮にいったとしても、過去や仲間が追いかけてくる。ペーソスなんて言葉が久しぶりに思い浮かぶし、あながち的外れではないだろうが、それでは足りぬ。ことは小市民の哀感にはとどまらないのだ、なにせユダヤ人の話なのだから。私たちはみんな、ユダヤ人だ。2018/07/02
三柴ゆよし
20
片隅に生きる人たちはいつだってブルーだ。それは小さな、余人からすれば、それこそ一息に吹き飛ぶような懊悩であり孤独にすぎないのかもしれない。しかし考えてみれば、私たちはだれもが皆片隅に生きている。そしてだれもが皆それぞれの孤独を抱えている。さらにまただれもが皆それを世界で最も重大な悲劇と考えている。マラマッドが描く片隅人間たちの代表は、ニューヨークに住むユダヤ人だ。敬虔なユダヤ教徒である人もいれば、出自を隠して生活している人もいる。そして私たちは、住む世界が違うとはいえ、彼らの抱える憂鬱を確かに理解できる。2015/09/30
さっちゃん
15
再読。アメリカでのユダヤ人、ヨーロッパでのユダヤ人というものが影絵のように浮かびあがってくる。明るくはないのに厳しい現実にペロッと舌をだしておどけてみたり、最後の最後で煙に巻かれ、またページをくることになったり。器用な手つきで次々と暗い部屋に影を出現させるマラマッド。またきっと再読する。2016/03/10
植田 和昭
12
最初の7年がよかったです。最初は大学の教養課程で講読したので買ったのですが、印象に残っています。夏の読書、掛売、湖上の貴婦人も良いのですが、一番の出来はマジックバレルでしょう。僕も以前結婚相談所に所属して活動していたのですが、データーのみを追求してしまい、結婚に至るのが難しいことに気が付きました。マラマッドすばらしいです。久しぶりに文学作品を読んだ気がします。キーワードは、ユダヤ人、貧しい、髪がないですね。市井の人々の生き様を生き生きと描いています。アメリカ文学素晴らしい。2024/10/26
有沢翔治@文芸同人誌配布中
12
バーナード・マラマッドは沈鬱な日常描写が特徴的なユダヤ人作家である。登場人物たちは決して豊かではない。他人を助けたいと思いつつも、非力なゆえに叶わず心が痛んでいるのである。しかし、全く救いがないわけではない。貧困は解決しないものの心の問題が解決し、それを象徴するような描写で終わる。 またアメリカ在住のユダヤ人も登場し、それは自身の経験を反映しているのだろう。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51506257.html2019/06/29
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