新潮文庫<br> カチアートを追跡して

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新潮文庫
カチアートを追跡して

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  • サイズ 文庫判/ページ数 549p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102042113
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

ある日突然、戦場からカチアートが消えた。8600マイル彼方のパリを目指して脱走したという。第三分隊は、追跡指令を受け、一路西へと進むが、神出鬼没のカチアートに翻弄されるばかり。蜃気楼のようなカチアートに幻惑されながら、彼らが旅路の果てに見出したものは…。兵士たちの奇想天外な冒険と奔放なファンタジーが交錯する、ヴェトナム戦争が生んだ最高の小説。全米図書賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

コットン

61
戦場のベトナムからパリへ行く脱走兵を追う第三分隊の物語。夢のようなパリまでの話は不安定感のある主人公の四級特技兵(スペック・フォー)ポール・バーリンを中心に克明に描かれていて、そこには作家ティム・オブライエンの普通の感覚としての戦争に対する恐怖や孤独感が作品に反映している。2015/07/18

harass

55
積ん読消化。ベトナムの戦場からカチアートが逃げ出した。分隊長は彼をみんなで連れ戻すことを命じた。彼の行き先は8000マイル先のパリだ…… この作家の三作目。アーヴィング『ガープの世界』!を差し置いて全米図書賞を受賞したという。全46章は三種類の章に分けられる。整理すると、1.主人公バーリンのベトナムでの戦場の実体験 2.退屈な海辺の監視塔でのバーリン 3.2のバーリンが想像する、奇想天外な「カチアートの追走劇」となる。ベトナム戦争の実録ものだがメタフィクションの構造がこの作品をユニークにしている。2016/07/14

ミツ

22
「兵士たちは夢見る者たちである」ある日突然パリへ行くと言ってベトナムの戦場を抜け出したカチアート、そしてそれを追う兵士たち。麗しのパリの幻影と霞のように揺らめくカチアートの姿。現在と過去といった時制は意味をなさず、現実と幻想、既に起こってしまった事実と、ありえたかもしれない可能性としての物語が混じり合う。戦場から逃げ、現実から逃げ、任務という名の逃走を続ける。耐えがたい恐怖と悲惨、意志も目的もない混沌の中で、それぞれの戦争を戦う兵士たちのハッピーエンドを願う想像力が生み出した途方もない物語。2015/08/09

田中

19
若い兵士は「ベトナム戦争」でどんな気持ちで戦ったのか、その心象風景がありのままに映される。部隊員ポール・パーリンの透明な視座から、戦地の一端をかいまみる一冊だ。派手な戦闘シーンがないぶん逆に現実な情景を感じる。ある日、カチアートが離隊(脱走)した。陸路パリを目指すらしい。部隊はカチアートを捕まえるべく後を追う。戦場にあるのは不気味な静寂。米軍兵の若者は、なにが正義でどれが悪いのか知らないしわからない。なぜなら、政治家や将校は明答しない。実際に従軍した著者オブライエンの筆致が、説得力をよびこむ。 2020/10/09

ハチアカデミー

15
壮大なる現実逃避と自己欺瞞。だがしかし、誰がそれを笑える? 目的のない戦争、善悪の彼岸ヴェトナムで青年は何を見たのか。その本質的な部分は幾重ものオブラートにつつまれる。むしろそこから目を背けるための夢想と思案が膨大に書き込まれたノートの様な作品である。脱走兵カチアートを追うという簡単に思われた指令は、当人たちの脱走物語へと変化していく。夢の都パリは、便宜的な目的地に過ぎない。カチアートなんていなかったのかも知れないし、すでに死んでいるのかもしれない。本書の恐ろしさは当人すら虚実を判別できていない点にある。2014/01/22

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