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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
50
ピップの周囲の人々の思惑に翻弄されます。どこで歯車が狂ったのか考えてしまいます。危うい運命はどこへ通じているのかがテーマになっているような気がします。痛烈のユーモアと深い情念で人々の悲喜交々を描いているのは面白いと思いました。2024/01/30
aika
48
これまで読んできたディケンズの中で最も鮮烈で、忘れられない作品になりました。ピップに大いなる遺産を継がせた人物の正体にはゾクッとしましたが、それ以上に、上巻では秘められていた一つ一つの謎が明らかになり、想像を超えたところで繋がっているのはさすがディケンズです。親友ハーバートへの深い友情の念や、ミス・ハヴィシャムの養女エステラへの慕情の強さなどから、ピップの泥臭さが魅力的に思えてきました。彼が挫折や転落を経験して人間的な深みを増して成長する姿と、登場人物たちが辿る物語の結末を目撃できる高揚感が味わえます。2021/07/28
Shun
37
遺産相続権を得てピップの生活水準が向上したはいいが、支払いのツケが増えていくことに不安を感じながら読み進めていった。未だ不明な相続元の謎に加え、故郷に残してきた愛すべき人たちへのピップの心情の変化もこの先いくらか暗い局面が訪れる前触れに思えてならない。明らかに遺産の相続という後ろ盾が未熟な青年を些か高慢にし、またピップとは別の場面で例の脱獄囚たちに何があったのかが描かれていき、これらの叙述は来る破滅の舞台へ準備が着々と進むかのような臨場感があった。そしてディケンズ作品の中でもミステリー色の強い作品でした。2021/10/22
まると
27
さすが文豪と呼ばれる人の代表作だけあって、素晴らしい小説でした。起伏が少なく謎めいてもいた上巻から一転して、下巻は加速度的に物語が展開し、前半で巡らせていた伏線が紡がれていきます。ラストも読者迎合的なハッピーエンドに短絡させることなく、抑制が効いていて、心を揺さぶられました。人の仕草や情景描写がきめ細かく、ユーモラスなところがディケンズの作風なのでしょうか。日本の山本周五郎のように、貧しくとも正しく生きる人たちへの優しい眼差しが作品に貫かれていて、読後感がとても心地よい。いつかまた他の作品も読んでみよう。2021/12/26
特盛
26
評価4/5。ガーディアン1000作品。ビルドゥングスロマンでもありミステリーサスペンスっぽくもある。色んなテーマが詰め込まれた骨太の小説で下巻以降はまさにページターナーだった。読んで良かった。人は変わる、でも変わらない。必然性と偶然性。そんな揺れ動きに人生の物語的な意味を考える。今しんどくても今ハッピーでも人生というのは最後のページまで分からないものだ。もっと言えば最終ページが遡行的に人生の意味を作るのだ。実に味わい深い。2025/04/21