感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
192
再読。今回1番驚いたのは、本書の訳文だった。新潮文庫としての刊行は1951年だが、訳者は1943年に亡くなっているので、それ以前、1930年代のポー全集の訳だろうか。今読んでもまったく古さを感じさせない斬新で現代的な文体だ。これだけの新しさなら、当時の小説家や詩人たちをも大いに啓発したことだろう。一方、ポーの一群の小説は、いい意味で古色蒼然、アメリカン・クラシックの風格を漂わせている。ことに「黒猫」と「アッシャー家の崩壊」は、ネクロフィリアと石の冷たさが全編を覆い、小説全体が陰鬱な詩的情調に満ちている。2014/05/03
とよキチ
52
数年振りに読了。読書嫌いだった私が、かつて読んだ作品はどんなものかと、期待しながら読んだ。やっぱり面白い!自分にはポーや乱歩の雰囲気が合ってるんだと、再認識。2012/10/16
karatte
42
古書。購入日時は20年くらい前? 基本的にライトな短編よりも重厚な長編が好みなのだが、ポーは別格。『モルグ街の殺人事件』所収の短編群に勝るとも劣らぬ、〈重厚な短編〉とでも言うべき傑作揃い。ホラー、サスペンス、ミステリ、幻想文学、アクション、冒険小説……様々なジャンルを打ち出しながら、独自の視点で〈恐怖〉を剔出するその手腕は唯一無二。詩文にも精通した、アメリカが生んだ早すぎた鬼才。2017/07/28
おすし
32
『黒猫』狂人による凶行についての語り。なぜ悲劇のヒロイン的態度(憤怒)。『アッシャー家の崩壊』ゴシックホラー風味。『ウィリアム・ウィルスン』つきまとうドッペルゲンガー。『メールストロムの旋渦』海こわい。大渦に呑まれたら試してみよう(信じるか信じないかはあなた次第)。『黄金虫』他は怪談、恐怖小説だけど、こちらはコミカルですらある推理小説。探偵役の奇行になんだかけむに巻かれつつ付き合っちゃう友人というパターンのハシリでしょうか。200年近くたっても受け継がれているなんて!面白かったです。2021/07/29
おにく
26
古本屋で購入。どうやら現在刊行されている新潮文庫(巽 孝之氏訳)より以前の傑作選のようです。いい機会なので、新旧の新潮文庫二冊を読みくらべ、翻訳の違いを楽しみました。2017/06/06