内容説明
“食うや食わず”は生ぬるい―極寒のアイルランドで靴は贅沢品、毛布代りの古コートで眠り、ジャム瓶にいれた出がらしのお茶で空腹を紛らす。でも膝のカサブタを食べて餓えを凌ぐ子よりマシかも?字の読めない掃除人が暗唱するアイルランドの詩は素晴らしいし、隣のラジオから聞こえるシェークスピア劇はすごい。悲惨な中から生きる希望が湧いてくる、ピュリッツァー賞受賞作。
著者等紹介
マコート,フランク[マコート,フランク][McCourt,Frank]
1930年アイルランド移民の長男としてニューヨークで生れる。4歳の時、アイルランドの町リムリックに移るが、一家は極貧の生活を送った。19歳で単身ニューヨークに渡り、様々な職業を経た後、高校教師となる(英語と作文)。’87年退職。幼少年時代を描いた『アンジェラの灰』は処女作ながらピュリッツァー賞を受賞、ベストセラーとなった
土屋政雄[ツチヤマサオ]
1944年生れ。翻訳家
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感想・レビュー
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遥かなる想い
146
下巻に入っても。フランキーは 元気に 生きて行く。アイルランド人で 下層階級で あることを忘れず、高望みをしない一家は ある意味 逞しい。 伝記部門で1997年ピュリッツァー賞を 受賞した本書は アイルランド系アメリカ人の 当時の生き方を 現代に伝える。 19歳になった僕がアメリカに渡るところで、 本書は終わるが、続編も楽しみ。2019/06/12
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
37
主人公のフランキーが少しずつ成長するに従い、考える範囲が広がっていく。貧しさゆえにボロボロの格好をしているのに「汚い」と叱られるのはなぜか。空腹で倒れそうなのにりんごを盗んで食べ罪をとなって地獄に行かなくてはいけないのはなぜか。告解をきく神父が「貧しい子供よ。私がしなければならないのはあなたの罪を赦す事ではなく、あなたの足にキスする事なのに」と泣くのはなぜか。貧しさを蔑み無理解の人々と、貧しさに同情し心を痛めてくれる人々の中で成長するフランキー。冒頭の「よく生き延びたものだ」。本当にそう思う。2019/02/12
James Hayashi
35
アイルランドで苦しい生活ながらフランクは成長していく。行ったことはないが、ストーリーからアイルランドの雨の多いジメジメした様子は伝わってきたが、心の持ちようなのか、暗さや極貧の辛さがあまりない。映画になったりミリオンセラーになった作品という事であるが、もっとフランクの童心を読み取れれば感動したのかもしれない。その後のアメリカでの生活は「アンジェラの祈り」という作品があるらしい。「灰」の意味もそちらで説明されているとの事。2017/03/21
更紗
5
学べ、と先生は言う。歴史もほかのことも、学んで自分で判断しろ。頭が空っぽでは、判断のしようがないぞ。頭をいっぱいにしろ。頭に詰め込め。そこはお前たちだけの宝の倉だ。世界中の誰も手を出せない。(省略)お前たちは貧しいかもしれない。お前たちの靴は破れているかもしれない。だが、お前たちの頭の中は宮殿だ。2024/01/20
inarix
5
「学べ、と先生は言う。歴史もほかのことも、学んで自分で判断しろ。(中略)頭をいっぱいにしろ。頭に詰め込め。そこはお前たちだけの宝の倉だ。世界中の誰も手を出せない。(中略)お前たちは貧しいかもしれない。だが、お前たちの頭の中は宮殿だ」アメリカに生まれながら両親の故国アイルランドで貧しい子供時代を過ごした自らの体験を綴り、1996年に発表された著者の自伝。全米でミリオンセラー、世界30カ国で翻訳、99年に映画化。この作品はまず映画を観たが、フランクの通う小学校の校長先生のこの台詞は誰にも共通する金言だと思う。2014/03/15