出版社内容情報
パデュアの街に展開される楽しい恋のかけひき「じゃじゃ馬ならし」。知事の娘の婚礼前夜に起った大騒動「空騒ぎ」。機知舌戦の二喜劇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
339
(感想は「じゃじゃ馬ならし」のみ)本作はシェイクスピアの習作時代に書かれ、上演されたものであるらしい。悲劇と違って、シェイクスピアの喜劇にはあまり馴染みがないのだが、後の(とは言ってもわずか2,3年後なのだが)「夏の夜の夢」に見られるような弾けるばかりの舞台と比べると、地味な印象は否めない。現代の我々にとっては、メインプロット(ペトルーキオーによるカタリーナのじゃじゃ馬ならし)にそもそも無理を感じるし、サブプロットもまたお座なりな印象が残る。さらには、これを劇中劇に仕立てた意図も曖昧なままだ。2018/09/05
優希
124
シェイクスピアの喜劇が2本。珍しく悲劇要素はありません。じゃじゃ馬が淑女になったり、恋の三角関係が描かれたりと、陽気な恋に横恋慕と明るい情熱が見受けられました。2作ともドタバタコメディの色が見えますが、最後は落ち着くところに落ち着くのがいいですね。悲劇を描くと右に出る者はいないというイメージのシェイクスピアですが、このような明るい作品も面白くて、戯曲作家としての幅の広さを感じずにはいられません。2017/01/16
紅はこべ
109
「空騒ぎ」反発し合う男女が恋に落ちる恋愛ものの原型か。ベアトリスはエリザベス・ベネットの先輩。ケネス・ブラナーとエマ・トンプソンの映画は良かった。ベネディックに「クローディオを殺して」と迫るエマ・トンプソン、圧倒的迫力だった。「じゃじゃ馬ならし」 「ヴェニスの商人」と並んで、現在上演するのに色々問題がある作品。以前何かの番組でリュートの実物が紹介されて、これなら女性が男性の頭を殴れると思った。カタリーナは絶対そのままの方が魅力的だよ。ペトルーキオーは浮気する可能性大。2017/07/10
syaori
73
初期と中期の喜劇を収録。どちらも恋人たちの駆け引きや行き違い、それが大団円へと収束してゆく様がとにかく楽しく、解題で指摘されるような矛盾や問題点などもありますが、それらを補って余りある物語や登場人物たちの勢いと魅力に大いに劇を享受しました。また二作並べることで、『じゃじゃ馬ならし』では劇の勢いに振り回されがちな印象だったのが『空騒ぎ』ではその勢いを殺さずに登場人物たちの役割や出来事を巧みに組み立てているというように、作者の成長も感じられるよう。機知と自立心に富んだベアトリスが魅力的な『空騒ぎ』が大変好き。2021/12/13
おにく
35
演劇には話を進展させるため、悪役や憎まれ役は必要だと思っていました。例えば、ヴェニスの商人に出てくる"ユダヤの高利貸し"は、人種の面で配慮が必要ですけど、劇中では重要な役どころとして、憎まれ役に徹して欲しいですし、今作の"じゃじゃ馬ならし"で、ペトルーキオーがカタリーナを教育するくだりは虐待や洗脳まがいですが、いちおう"劇中劇"という扱いなので、おおらかに捉えようと思いました。それでも"空騒ぎ"において、心優しい娘ヒーローが傷つけられる場面はあまりに不憫で、その後の展開が頭に入らなかったほど。(続く↓) 2022/02/13